研究課題
クレーター実験:前年度開発した水平方向からの観察システムを用いて砂標的に対するクレーター成長の観察を行った結果,0.1-1Gで得られた重力依存性が0.01Gまで外挿できることを確かめた.また,7Paでの砂標的に対する0.3-1Gでの実験を行い,クレーター直径の絶対値は減圧下の方が大きいものの,重力加速度依存性は大気圧下と同様であることを示した.一方,数Paに減圧したチャンバー内と大気中とで,クレーター直径の違いを説明できる摩擦角の違いはないことを示した.さらに,標的粒子に対する空気抵抗について検討し,掘削流が空気によって減速されることが大気中でのクレーター直径を小さくする可能性を示した.以上は,研究協力者である大学院生木内真人氏が中心となって行った.模擬レゴリス圧密実験:本研究での標的空隙率はいずれも約40%である.しかし,天体表面のレゴリス層では,微小重力下において粒子が粒子間固着力で支えられるために,40%よりも高い空隙率が実現されうる.そこで,模擬レゴリス層の圧密実験を行って,空隙率と土圧の関係についての基礎データを得た.その結果,空隙率が40-70%の粒子層においては,層の圧密されにくさと粒子間のすべり摩擦力との間に相関があることを示した.さらに,実験で得た圧密曲線を用いて粉粒体からなる小天体の内部空隙率構造を定量的に示した.以上は,研究協力者である大学院生大村知美氏と行った.数値シミュレーション:粉体層への衝突によるクレーター形成過程において,弾丸が多粒子からなる場合には放出破片量が弾丸の運動量で決まる一方,弾丸が小さな一粒子からなる場合には運動エネルギーで決まること明らかになってきた.このことは,クレーター形成過程において粒子間相互作用によるエネルギー散逸がどのようなものであるかを理解することが重要であることを示しており,実験の解釈にも影響を及ぼすものである.
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究により,年度当初に予定した減圧下での模擬低重力衝突クレーター実験を行ってデータを取得すること,粉体の内部摩擦角の大気圧依存性についての実験データを得ることが達成できた.また,異なる重力下での粉粒体天体の衝突過程を考える上で重要な,粉粒体層が持ちうる空隙率に関して,模擬レゴリス層の圧密実験を行って,空隙率と土圧の関係についての基礎データを得た.実験で得た圧密曲線を用いて,粉粒体からなる小天体の内部空隙率を推定し,小惑星について得られている空隙率との比較を行うという当初の予定になかった研究の進展があった.一方,これまでの実験ではステンレス弾丸を用いていたが,ガラスやナイロン弾丸を用いた実験を行ったところ,クレーターサイズの重力依存性と衝突速度依存性の間に,弾丸密度依存性があるということが新たにわかってきた.小天体表面のクレーターへの応用において重要なポイントであるので,この点を明らかにするための追加実験が必要となり,論文執筆が遅れている.数値シミュレーションにおいては,粉体標的の形成において重力が影響すること,衝突の際のエネルギー散逸がどこで生じるかが重要であること,という知見が得られた.これをもとに実験結果を総合的に解釈することを試みつつある.
クレーターサイズの重力依存性と衝突速度依存性の間の,弾丸密度依存性について追加実験を行い明らかにし、本研究の結果を小天体表面での衝突過程へ応用する.研究成果をまとめた論文を執筆・投稿する.
クレーターサイズの重力依存性と衝突速度依存性の間に,弾丸密度依存性があることが新たにわかってきた.そのため追加実験を要し,論文執筆・投稿が遅れている.
弾丸密度依存性についての追加実験と,実験結果の小天体衝突過程への応用に関する学会参加と研究打合せ,および論文執筆・投稿を行うために使用する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件)
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