研究課題/領域番号 |
25400454
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小田 仁 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50127552)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | S波偏向異方性 / Ps変換波 / レシーバ関数 / 沈み込み帯 / マントルウエッジ |
研究概要 |
本研究の目的は,コンラッド面及びモホ面,並びに沈み込む海洋プレート上面で発生するPs変換波と深発地震の直達S波の偏向異方性を「剥ぎ取り法」で解析し,上部地殻,下部地殻,及びマントルウエッジにおけるS波偏向異方性の構造を推定することである。平成25年度は,この目的が達成できるかどうか確認するため,異方性地震波速度構造を仮定したときの地震記象を合成し,その合成波形に現れるPs変換波や直達S波の偏向異方性の検出を行った。地震波速度構造には,日本列島沈み込み帯に典型的にみられる構造を仮定した。即ち,水平な上部地殻,下部地殻の下に,斜めに海洋地殻や海洋プレートが沈み込んでおり,従って,地殻とプレートの間にマントルウエッジが存在している構造となっている。地震波異方性は,地殻,マントルウエッジ,および海洋地殻の中に仮定した。Ps変換波は,合成波形から算出されたP波レシーバ関数を用いて検出した。Ps変換波や直達S波の偏向異方性の測定には,波形相関法を使用した。その結果,「剥ぎ取り法」を用いれば,仮定した地震波の異方性構造が正しく推定できることを確認した。この結果に基づいて,現在,これまでに収集したHi-netやF-netの波形記録の解析を行って,東北地方の地殻やマントルウッジの異方性構造の推定を行いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,仮定した地震波異方性速度構造に対してP波レシーバ関数や直達S波を合成し,その合成波形に現れるPs変換波や直達S波のスプリッティング解析によって,仮定した異方性構造が再現できるかどうかを,数値実験によって確かめることであった。ここで,問題となるのは,日本列島沈み込み帯のように,斜めに沈み込んでいる海洋プレートが存在している異方性速度構造モデルに対して,理論波形を合成することである。この困難さは,前年度の研究でおおむね克服できているので,仮定した沈み込み帯の異方性速度構造に対して,地震波の合成波形を計算することができた。従って,平成25年度で予定していた研究計画は,順調に遂行することができたと言える。また,Hi-netの地震記録の収集も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は,東北地方の観測点で得られた地震波記録を解析し,地殻・マントルウエッジの異方性構造の推定を行う。まず,遠地地震のレシーバ関数解析によって同定されたコンラッド面とモホ面のPs変換波にS波スプリッティング解析を行い,上部地殻のS波偏向異方性の方向と異方性の強さを見積もる。モホ面で発生したPs変換波には,上部地殻の異方性の影響を補正し,その補正されたPs変換波に波形相関法を適用して下部地殻の異方性を推定する。さらに,海洋プレート上面で発生したPs変換波と近地深発地震の直達S波から上部・下部地殻の異方性の影響を取り除き,補正されたPs変換波や直達S波のスプリティング解析によりマントルウエッジの異方性を推定する。Ps変換波と直達S波の解析で得られたマントルウエッジのS波偏向異方性を比べ,得られた結果の妥当性を検討する。このようにして上部・下部地殻およびマントルウエッジの異方性を観測点毎に推定し,S波異方性の空間的変化の特徴を調べる。とくに,偏向異方性の向きの地域的変化が,東北地方のP波方位異方性のそれと調和的な結果になるか否かについて確認する。また,マントルウエッジの偏向異方性の方向の分布とプレート上面の深さ分布の関係を調べ,プレートの沈み込みが異方性に及ぼす影響を吟味する。同時に,地殻の異方性が,プレート上面で発生したPs変換波や直達S波に与える影響についても検討する。さらに,波の減衰が地震波異方性に与える影響も検討する
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に充てる 次年度に充てる
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