研究課題/領域番号 |
25400455
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中田 正夫 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50207817)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 地球回転変動 / 海水準変動 / 氷床変動 / 地殻変動 / テクトニクス / マントルレオロジー / マントル対流 / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
[i]過去~100年の地球温暖化に伴う山岳氷河や大陸氷床の融解の定量的評価,[ii]観測されている過去~100年の地球回転変動からマントル対流の時間変化の評価,[iii]マントル遷移層の粘性率を評価し,水の影響がどの程度あるのかを定量的に議論,[iv]日本列島の氷河・氷床変動に伴う海水準変動を10万年,千年-1万年,100年スケールで評価し,各々時間スケールのテクトニック地殻変動を推定し巨大地震の長期予測に貢献する。これら研究をもとに,マントルのダイナミクスやテクトニクスの研究に貢献することを目的とする。本年度は,主に,以下の2項目の研究を推進した。 (1) 日本列島の氷河・氷床変動に伴う海水準変動を10万年,数千年,100年スケールで評価し,各々時間スケールのテクトニックな地殻変動を推定した。倹潮儀のデータと2013年度に公表した計算値による日本列島の地殻変動は,ほとんどの地域において沈降である。しかし,過去6千年間の海面変動と12万5千年前の海成段丘から推定される海水準の観測値と計算値による地殻変動は,両時間スケールで調和的であり,ほとんどの地域で隆起を示す。つまり,これらの時間スケールの地殻変動は,100年スケールでの地殻変動と逆センスで,巨大地震の長期予測において非常に大切である。これらの研究成果は,2014年度に国際誌に公表した。 (2) 重力場変動から推定される過去数十年の地球自転速度変動(J2-dot)と,IPCC2013報告による最近の氷床融解データにより,glacial isostatic adjustment(GIA)成分のみのJ2-dotを評価し,信頼できる下部マントルの粘性率を評価した。かつ,その粘性モデルに基づき,マントル対流に伴う質量再分配の極移動への影響を評価した。これらの成果を国際誌に投稿し,高い評価のレビューを受け,現在改訂版の査読中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近の地球温暖化に伴う山岳氷河や大陸氷床の融解に関する成果は2013年度に国際誌に公表し,その成果を考慮した日本列島の3つの時間スケールのテクトニック地殻変動に関しても研究を遂行し,その成果を2014年に国際誌に公表した。最近の自転速度変動による粘性モデルの評価,及び,マントル対流の極移動への影響もほぼ定量的に評価でき,国際誌に投稿した。査読において高い評価を受け,現在その改訂版の査読中である。
|
今後の研究の推進方策 |
水の影響がマントル遷移層(400-660kmの深さ)の粘性率にどのように影響するかに関しての定量的な議論を予定しているが,予備的な計算結果ではなかなか評価は厳しそうである。そのため,次年度はGIAによる下部マントルの推定に,GIA氷床モデル(過去2万年前から6千年前)の不確定さがどのように影響するかを中心に研究を進めていきたい。そして,その不確定さが,どの程度現在投稿中の粘性モデルに影響するかを評価し,2015年度中には成果を得て国際誌に投稿できるようにしたい。
|