研究課題
平成27年度においては、岩石の浸透率異方性を評価するための実験手法を確立することを最終目標とした。そのため、堆積学的及びテクトニックなバックグラウンドが明らかなフォアランド堆積盆のタービダイトについて、加圧含浸法に基づく磁性流体実験を実施し、前年度の減圧含浸実験の結果と比較した。当該試料については、従来の手法に基づく岩石磁気学的研究を既に公表しており、磁性流体実験の結果と詳細な対比が可能である。また、実験に先立って試料採取ルートの野外調査を行って岩相・堆積環境を解析し、チャネル・レビーやシートタイプなどタービダイトのバリエーションに富む堆積相からまんべんなくデータ取得することを心がけた。処理を行った試料のすべてについて、マイクロフォーカスX線CTスキャナーを用いて、試料の断層画像を取得し、三次元的な孔隙・フラクチャーネットワークを可視化して解析を行った。以上の作業と並行して、断層近傍の堆積盆を埋積する砕屑物に磁性流体の最新メソッドを適用する前提として、フィッショントラック法ならびにレーザーアブレーション・ウラン-鉛法に基づく放射年代測定を実施して、堆積盆発達過程を定量的に評価した。平成27年度に対象としたのは、糸魚川-静岡構造線と中央構造線近傍の堆積岩である。前者については、太平洋プレートの収束運動センスの変化に伴って圧縮応力場が卓越する状況が続き、フォアランド堆積盆が激しい構造変形を被っている。後者については、フィリピン海プレートの収束方向変化に伴って横ずれ断層運動が強化され、地層のセグメント化が進行している。それらの変動に伴って、堆積岩中に微細フラクチャーネットワークが発達し、地層流体の移動経路として機能することが予想された。今回の年代測定結果に基づいて、多様なテクトニック・イベントの時空分布を解明し、磁性流体実験が示す岩石ファブリックとの相関を考察することができた。
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Marine Sediments: Formation, Distribution and Environmental Impacts
巻: 1 ページ: 14
Horizons in Earth Science Research
巻: 14 ページ: 123-141