研究課題/領域番号 |
25400457
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
熊谷 一郎 明星大学, 理工学部, 准教授 (50597680)
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研究分担者 |
村井 祐一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80273001)
田坂 裕司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00419946)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マグマ / プルーム / ゲル / 脈動 / 可視化 / 流体実験 / 火山 / レオロジー |
研究概要 |
本年度の研究実施計画に従い、以下の2点のテーマに取り組んだ:1.実験で使用する粘性流体と透明ゲルの選定およびそれらについてのレオロジー計測、2.ゲルビーズ中を運動するプルームの挙動に関する可視化実験。以下、概要を述べる。 1.本実験で使用する変形可能なporous mediaの選定と使用流体のレオロジー計測を行った。プルームの運動によって周囲ゲルの変形を引き起こすためには、ゲルに適度な柔らかさがなければならない。また、流れの可視化実験の為には、使用するゲルは透明である必要がある。そこで、様々な寒天や高分子ポリマーを入手し、水分量や温度の調整によってゲルの変形しやすさがどのように変わるのか実験を行った。また、注入する粘性流体の粘度や密度の温度依存性についても計測を行った。これらの結果は、今後の実験における基礎データとなる。 2.変形可能なporous media中を流れるマグマの挙動を模擬するために、1で選定した透明ゲルおよび粘性流体を使用し実験を行った。実験では、ゲル粒子の変形や粘性流体の流れ場を捉えるために、蛍光粒子とレーザーシート光を用いた流れの可視化法を適用した。マグマに模した粘性流体の注入流量を制御するために、本年度購入したローラーポンプを使用した。注入流量、流体の粘度、ゲルの割合に応じて、連続した流れから脈動的な流れまで(浸透流モードからプルームモードまで)、様々な流れ現象を得ることができた。それらの流れの様子を表した相図を作成し、その成果を国内外の学会で発表した。さらに、壁の制約を受けやすいダイクにおけるマグマの流れを理解するために、ゲル粒子に接する壁の境界条件を変えた実験を行った。その結果、固体壁では浸透流モードが起きやすく、変形可能な壁ではゲル粒子層の流動化が起こりやすくなった。特に後者では、特徴的な振動を起こす脈動流れが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画では、1.実験で使用する粘性流体と透明ゲルの選定およびそれらについてのレオロジー計測、2.ゲルビーズ中を運動するプルームの挙動に関する可視化実験を主に行う予定であったが、これらはほぼ実施された。レオロジー測定については、東京大学地震研究所のレオメータを使用することで、使用流体の基本物性を取得することができた。ゲルを用いた流動化実験(プルーム実験)では、当初、圧力センサ等を用いた実験を行う予定であったが、確実な成果を得るために必要な防水性を持つ小型圧力センサが入手できなかったため、本年度の実験は見送らざるを得なかった。しかしながら、蛍光粒子やレーザー光を用いた流れの可視化技術を駆使することで、ゲル粒子層中の流れの脈動性を十分捉えることができた。今年度得られた実験成果については、国内外の学会で発表を行なっている。その成果は概ね好評を得ており、本年度開催された火山に関する国際会議に参加していた別の国際会議のオーガナイザーから、本研究に関する講演を依頼され、次年度の夏に講演することになった。 今年度の実験では計画されていなかったが、今年度の研究実施計画を遂行中、ゲル粒子を満たした水槽の壁が,内部の流動現象に大きな影響を与えることも明らかになった。特に移動壁を用いた実験では、特徴的な流れの脈動現象を得ることができ、今後の研究において、さらに調査を進めていくべき新たな課題を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の計画通り、3次元水槽を用いたプルーム実験を行う。変形可能なporous media を3次元の水槽に満たし、水槽壁の制約が小さい、より現実的な場合のプルームの振る舞いを理解するための実験を行う。プルームは、1.ノズルからの粘性流体の注入と、2.水槽の底に取り付けた局所熱源による加熱によって生成する。3次元水槽では、固液の光学的屈折率の違いによって固液界面での散乱が生じ、解析にたえる質の良い実験画像が得られない可能性がある。そこで、Refractive Index Matching 法を導入し、固液の屈折率を合わせる。 具体的には、レーザーシート光を用いたPIV 解析、感温液晶による2次元温度場の定量計測、レーザースキャンシステムによる、液相の3次元分布の可視化、歪速度分布、およびプルーム周りの局所レオロジー解析を行う。国際誌への投稿や学会での発表により、本研究の成果を積極的に社会へ発信していくとともに、当該分野の一流の専門家(スイス・ETH、東京大学地震研究所、フランス・パリ南大学、英国・Warwick大学の研究者など)との議論を通して、研究内容をさらに充実・発展させていく。 また、今年度の実験で見出した内容、すなわち、ゲル粒子を満たした水槽の壁の効果が、流動現象に与える影響について、脈動性や流れのパターン形成について定量的な実験を行ない、部分溶融体のマグマ輸送の物理を明らかにしていく。
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