研究課題
本研究では近地球小天体とその力学進化に関し、複数の切り口から観測的・数値的研究を実施した。その一つはこれまでほぼ顧みられることが無かった近地球小天体のオールト雲からの起源説である。このためにオールト雲の力学進化を連携研究者と共に実施し、そこから付随的に得られる新彗星がどのような力学的経路を辿って近地球小天体になり得るのかを数値シミュレーションによって検証した。その結果、内側オールト雲天体にいる彗星であれば数回の回帰の後にその1/1000程度がApolloまたはAmor型の近地球小天体になり得ることが判明した。その他の切り口としては若い小惑星族の自転速度分布の光学観測がある。これはメインベルト帯での小天体同士の衝突破壊現象の痕跡であると考えられ、近地球小惑星の供給機構とも密接に関連する課題である。私達はKarin族という新しい族構成員の光度曲線の観測から自転速度分布を測定し、その分布が形状と逆相関にあることを見出した。即ち小天体の形状が球対称から外れるほど自転速度が小さいことが判明した。今一つの切り口としては、近地球小惑星の分裂破壊の痕跡を探すことが挙げられる。これは近地球小惑星の供給機構やその定量的推定と関連し、近地球小惑星の起源が本当にメインベルトだけなのかを知るための情報となる。具体的には(3200) Phaethonという天体を高い時間分解能で分光し、結果的にその表面にスペクトルが大きく異なる2種類の部分があることを突き止めた。このような非一様性が近地球小天体では一般にどのくらい普遍的であるかを推定できれば、近地球小天体の起源には多くの制約を与えられると考えられる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
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