研究課題/領域番号 |
25400461
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
沢田 雅洋 気象庁気象研究所, 台風研究部, 研究官 (90466524)
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研究分担者 |
伊藤 耕介 琉球大学, 理学部, 助教 (10634123)
山口 宗彦 気象庁気象研究所, 台風研究部, 研究官 (80595405)
宮本 佳明 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 基礎科学特別研究員 (90612185)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 台風 / 予測可能性 / 防災 / 最適化 |
研究実績の概要 |
再解析データ(JRA55)を入力値として、台風の簡易強度予報モデル(JCHIPS)を用いた強度診断実験を3年分行った。ベストトラックを真値として、現業で用いられている全球モデル(GSM)による台風の強度予報結果と比べて、JCHIPSの予報誤差はほぼ同等の精度か、予報時間72-120hでは小さかった。 入力する環境場(鉛直シア、中層湿度等)の時間変化に対する台風強度の感度を調べ、鉛直シア、海洋混合層深さ、中層湿度、海面水温の順で感度が大きいことが分かった。GSMの出力を入力値とした強度予報実験を行い、バイアスを除去した予報誤差で比べると、JCHIPSの予報誤差はGSMと同程度の誤差となった。強度変化傾向を調べると、JCHIPSはGSMに比べて相関が高く、強度変化をより適切に捉えていることが分かった。これは台風周辺の環境場で台風の強度変化をある程度説明できることを示している。 TIGGE(THORPEX Interactive Grand Global Ensemble)からいくつかの予報センターによる予報値を取得して、JCHIPSに入力する環境場を作成し、これを強度予報に用いることで、決定論的な予報だけではなく、確率的な予報を行うための手法が構築できた。 昨年度作成したアンサンブルデータ同化システムを用いた初期値化実験を1年分行い、その効果を調べた。リードタイムが長い場合、初期値化をしない場合に比べて強度予報誤差がやや減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた過去十数年の台風強度予報実験は現在実行した期間が約3年分と遅れているが、環境場に関する感度実験を行い、台風強度変化に影響する外的要因について調べることができている。 TIGGEから取得した、複数の予報センターのアンサンブル予報データを用いた強度予報実験に着手し、環境場に含まれる不確実性の評価方法について検討し始めたところで、予定通り進んでいる。 アンサンブルデータ同化システムを用いた初期値改善による強度予報の改善を目指し、予報実験を行っているが、調整する物理パラメータ等が多岐にわたるため、システムの最適化に時間を要しており、予定より作業が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
様々な予報センターの予報値を入力値としてJCHIPSを動かすツールなどが準備でき、数年分の予報実験は実行済なので、遅れを取り戻すための長期実験は6月末頃に終え、並行してデータ同化システムを用いた初期値改善のための予報実験を7月末までに進める。 TIGGEから取得したいくつかの予報センターによる予報値を用いて、JCHIPSによる強度予報を行うことで、強度予報のばらつきが表現できた。これは強度予報の信頼度などの情報に使用できる可能性があり、今後、台風強度確率予報の実現可能性を図る。これらは新しい試みなので、学術論文にまとめる。 3次元モデルに比べてJCHIPSの方が再現性の良かった事例・悪かった事例について比較し、その要因を調べることでJCHIPSおよび3次元モデルの改善点を検討する。 今年度も開発・実験環境としてFX10を利用するので、互いに開発・実験した結果を容易に共有でき、研究の効率化を図る。また、気象庁・気象研究所において“5日先強度予報ガイダンス開発のプロジェクトチーム”が設置され、研究代表者らもメンバーに含まれることから、このメンバーと連携・協力し情報共有する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度に、スーパーコンピュータFX10の使用料を大幅に削減できたため、当初計画より昨年度は出張機会を増やし、海外研究者を招聘したが、繰り越し分の一部が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、国内外の出張機会を増やす予定である。また、海外から台風研究者の招聘を行う予定である。
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