研究課題/領域番号 |
25400463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
安永 数明 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (50421889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱帯気象 / 赤道波 |
研究概要 |
本研究の目的は,「赤道波と雲・降水の結合メカニズムの解明」であり,衛星観測データを統計的に解析したり,数値モデルを用いたシミュレーションを行ったりすることで,特に (A) 「熱帯で卓越する様々な赤道波によって,異なる特徴の雲・降水が発達するメカニズム」 (B) 「赤道波に伴って発達した雲・降水が,元々の赤道波に与える影響」 を明らかにすることである. 本年度は,降雨レーダを搭載した熱帯降雨観測衛星(TRMM)のデータセットを用いて,ケルビン波や慣性重力波に伴う擾乱の内,速く伝搬する成分と遅く伝搬する成分における降水特性の違い(対流性降水と層状性降水の変動の違い)を調べた.その結果として,(1)西進慣性重力波に関しては,速く伝搬する擾乱は遅く伝搬する擾乱に比べて,対流性降水の変動がより大きい(層状性降水の変動がより小さい)こと,(2)ケルビン波やn=0の 東進慣性重力波(東進の混合ロスビー重力波)に関しては、速く伝搬する擾乱と遅く伝搬する擾乱とで,対流性降水や層状性降水の変動に差が無いこと,が明らかになった.また,衛星によるマイクロ波観測から見積もった降水と水蒸気データを,統計的に解析することで,(1)前者の西進慣性重力波においては,擾乱に伴う降水に対して下層の水蒸気だけが有意に変動しており,赤道波と雲・降水の結合メカニズムとして,”Stratiform Instability”とよばれる不安定が重要で,(2)後者のケルビン波やn=0の 東進慣性重力波では,擾乱に伴う降水に対して下層の水蒸気だけでなく中層の水蒸気も有意に変動しており,赤道波と雲・降水の結合メカニズムとして,”Moisture-Stratiform Instability”とよばれる不安定が重要との考察を行った.これらの結果をまとめて論文として投稿し,受理・出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題のH25年度の目標は,「衛星観測データの収集・整備」であり, 解析データとして,降雨レーダを搭載した熱帯降雨観測衛星(TRMM),雲レーダ搭載のCloudSAT,雲ライダー搭載のCALIPSO,温度・水蒸気プロファイル推定のための可視/赤外域のサウンダ等が搭載されているAqua等の観測データを取得した.当初は,ネットワークを通じたダウンロードのみで,データの収集を行っていたが,ネットワークの状況から,データ取得に予想以上の時間がかかっていたことから,ネットワークダウンロードと平行して,取得予定のデータをすでに保持している国内の研究機関と,物理的なハードディスクのやり取りをしながらデータ収集を行った.この結果,当初の予定を大幅に上回る時間で,データ収集と整備が終了した.そのため,26年度以降の計画の研究に,前倒しして取りかかり,速く伝搬する赤道波動擾乱と遅く伝搬する赤道波動擾乱での,降水特性や水蒸気変動の違いを明らかにすることが出来た.更には,研究結果をまとめて,論文として投稿し,受理・出版まで到達できた.以上の点から,本研究課題は、予定を上回る達成度であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
前項「現在までの達成度」で述べたように,本研究課題は現段階で研究計画以上の成果が上がっていると考える.このことから今後に関しても,大きな計画の変更の必要性は考えていない.H26年度は,本研究課題の当初の計画であげた, 解析研究(A-1):赤道波によって発達する降水(加熱プロファイル)・雲の3次元的な特徴の違い 解析研究(A-2):赤道波に伴う温度・水蒸気プロファイルの変動 に関して,取得したデータを基に,更に解析を薦めて行く予定である.
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