本年度は本研究課題の総まとめとして、赤道波の種類毎に雲・降水との結合メカニズムがどう異なるかを、大気中の鉛直積算水蒸気量(可降水量)の方程式を基に、降水とのコヒーレンススペクトル、位相スペクトルに着目し調べた。より具体的には、可降水量の方程式の各項を全て波数―周波数分解し、降水に関わる水蒸気変動に対する各項の寄与をスペクトル空間で評価した。 MJOに関して:降水に伴う水蒸気の消費に対して、放射加熱と水平移流が水蒸気量を維持するのに重要である一方で、鉛直移流は水蒸気を減少させる働きがあった。また水平移流が、東向き伝搬に主要な役割を果たしていた。赤道ロスビー波に関して:水蒸気量の維持における各項の寄与の程度は、MJOとほぼ同様であった。しかし伝搬に関して、水平移流の役割がMJOと反対で、水平移流が西向き伝搬を妨げる役割を果たしていた。ケルビン波に関して:水蒸気量の維持における水平移流の役割は無視できる程度である一方で、放射加熱が維持に最も重要な役割を果たしていた。東向き伝搬に関しては、鉛直移流と放射過程が同程度に重要であった。混合ロスビー重力波に関して:水蒸気量の維持における各項の寄与に関して、MJOと同様に放射加熱と水平移流が重要であった。また伝搬に関して、鉛直移流が西向き伝搬に主要な役割を果たしていた。西向き慣性重力波に関して:ケルビン波と同様に、放射加熱が水蒸気量の維持に最も需要な役割を果たしていた。伝搬に関して、鉛直移流が最も重要であった一方で、放射過程の重要性はケルビン波に比べて低かった。 上記の結果を論文としてまとめ、投稿した(査読中)。
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