大気境界層の観測的、理論的、数値実験的研究は、これまで一様で広い平地を対象に行われてきた。その成果は広く受け入れられ、天気予報モデルを含む大気数値モデルに取り入れられて大きな成功を収めている。しかし、現実に多く存在する地表面には一様で広い平地は少なく、非一様でかつ起伏があるのが通常である。土地利用も含めそのように複雑な地表面上での大気境界層乱流がどのようなものであるべきかについては、ほとんど調べられていない。本研究では、周辺環境を自由に変えることのできる数値モデルと観測とを組み合わせることにより、観測結果の代表性を評価することを目的とし、初年度の実施項目の「大気境界層乱流観測の代表性の評価」について、以下の2項目を実施した。 (1) 大気乱流輸送過程の観測の実施 和歌山県東牟婁郡串本町にある京都大学防災研究所潮岬風力実験所の高さ25mの観測鉄塔に既所有の超音波風向風速温度計を設置し、本研究経費で購入するロガーを接続して大気境界層乱流の観測を開始した。データはインターネットを経由して、京都府宇治市の防災研究所に転送できるようにした。予備解析を研究室既存のワークステーションで行った。(担当 : 林)。 (2) 数値モデル実験 自家開発し稼働実績のある超高解像度大気モデルへのLESの実装を開始した。LESについては多くのスキームが提案されているが、3次元の大規模計算を大学の計算機センターで行う必要があることを考えて計算の簡便さ重視し、風速シアーと温度成層からsub-grid(格子点分解能以下)スケールの擾乱の効果を表現するSmagorinsky-Lillyモデルを採し、LESを使った計算を開始した。(担当 : 里村)。
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