研究課題/領域番号 |
25400468
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 准教授 (30421879)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 台風 / ドップラーレーダー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、南西諸島で運用されている気象ドップラーレーダーを用いて台風の中心近くにおける風速分布と中心気圧の推定を行うことである。平成26年度にはプログラムの精度検証や、沖縄島の周辺を通過した台風の強度推定を行い、気象庁の推定値(ベストトラックデータ)との比較を行った。 強度推定を行うプログラムについて、当初は米国の研究協力者から提供を受けることを計画していたが、連携研究者との相談の結果、将来的な改良や独自発展の可能性を持たせるため、プログラムを新たに作成することになり、平成25年度中に作成し、平成26年度には精度の評価を行った。強度の推定には台風の中心位置を精度良く求めることが重要で、レーダーで取得した極座標の生データから直交座標へ内挿処理をすることにより生じる中心位置の誤差が、強度推定にどの程度の誤差を与えるかについて、数値モデルの出力結果を用いて検証を行った。その結果、降雨エコーの取得範囲が広い場合は大きな問題にはならないが、乾燥空気の貫入によって降雨エコーの取得範囲が減少する場合は中心位置の推定誤差が大きくなることがわかった。 実際の観測データを用いた強度推定については、2008年~2014年の期間に取得された21事例に対して行った。事例全体ではベストトラックデータと概ね整合する推定値が得られたが、事例によっては大きく異なる場合があった。この不整合については、ベストトラックデータが必ずしも正確ではない場合があるため、複数台のレーダーによる解析などで今後詳しい検証を行う必要がある。また、精度を上げるためのデータの品質向上(ノイズの除去や信号処理のエラーの除去など)についてもさらに検討する必要がある。 以上の成果について、国内外の研究会や学会において発表を行うとともに、強度推定プログラムの技術的な課題について、米国の研究協力者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に作成したプログラムの動作確認と誤差の評価を実施することができた。また、過去の台風に関する強度推定については合計21事例に対して行い、ベストトラックとの比較により概ね良い精度で推定が出来ることを確認することが出来た。このため当初の計画に対し概ね順調に進んでいるといえる。 一方で、推定強度がベストトラックと大きく異なる事例がある点については、今後複数台のレーダーを用いた精度の良い(ただし計算領域が狭い)風速場の推定によって検証する必要がある。また、現業での利用を目指したデータ処理の自動化についても検討すべき課題の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究が概ね順調に進展したので、平成27年度には論文の執筆と学会での発表を行う計画である。推定強度がベストトラックと大きく異なる事例がある点については、今後複数台のレーダーを用いた風速場の推定によって検証を行う予定である。また、平成27年度中に新たな事例が得られる場合はその解析も行う予定である。また、データ処理と強度推定の自動化を行うことも平行して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した観測データと解析結果の保存のために増設用のハードディスクを購入する計画であったが、前年度に購入したサーバーの容量が十分であったため、本年度の購入を見合わせた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は観測データや解析結果の他に、論文の執筆や発表資料の作成に使用するデータの保存が必要になるため、バックアップ用のハードディスクを購入する計画である。
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