研究実績の概要 |
本研究では南西諸島で運用されている気象ドップラーレーダーを用いて台風の中心近くにおける風速分布と中心気圧の推定を行うことである。平成25年度には強度推定プログラムの作成、計算サーバーの導入、観測データの収集を行った。平成26年度には2008-2014年に取得された台風21事例を用いて強度推定を行い、気象庁ベストトラックデータと比較して精度の検証を行った。最終年度である27年度には、これらの成果をまとめて論文を執筆するとともに、研究期間中に取得された新たな台風の事例に対し強度の推定を行った。 計画当初はプログラムを米国の研究協力者から提供してもらう予定であったが、連携研究者との協議の結果、将来的な改良や独自発展の可能性をもたせるためプログラムを独自で作成した。ベストトラックとの比較では、全体として整合する結果を得たが、個々の事例では相違が顕著な場合もあることがわかった。この内容は米国気象学会の雑誌に掲載された。 平成27年度に特筆されることは、先島諸島を通過し石垣島に被害をもたらした平成27年台風第15号について、島へ接近する前後において中心気圧が30hPaも低下する急速な発達があったことを強度の推定から明らかにしたことである。このような急速な発達は、衛星を用いた推定方法では捉えることが難しいが、5分間隔で観測を行う気象レーダーを用いることで推定が可能になる。将来的にリアルタイムで実施できれば防災上有益な情報を提供できることになると考えられる。この結果については報道発表を行うとともに、現在論文を執筆中である。 本研究では当初の目的を達成し予想以上の成果を得ることが出来たが、リアルタイムでの動作や精度検証に課題が残り、これらの点は新たな科研費(基盤B, 16H04053)の枠組みで継続して取り組む予定である。
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