研究課題/領域番号 |
25400469
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
渡辺 幸一 富山県立大学, 工学部, 教授 (70352789)
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研究分担者 |
朴木 英治 富山市科学博物館, その他部局等, 研究員 (10373482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘリコプター / 過酸化水素 / 二酸化硫黄 / 硫酸塩粒子 / PM2.5 / 越境汚染 / 立山 / 桜島 |
研究実績の概要 |
北陸地方上空における大気環境評価のため、2014年9月および2015年3月に、小型ヘリコプターを利用した上空大気観測を実施した。高度4000 ft(約1200 m)および高度8000 ft(約2400 m)に上昇し、観測を行った。水平飛行中に、ミストチャンバー法により大気中の過酸化水素や、メチルヒドロペルオキシドを採取した。試料採取後、富山県立大学構内へ降下し、速やかに高速液体クロマトグラフを用いて分析を行った。学内への試料輸送後には直ちに次の観測高度へ上昇し、再びサンプリングを行った。この方法により、試料採取後10分以内に分析を行うことができ、精度の良い上空大気中の過酸化物の測定が可能となった。ヘリコプターの後部座席には、二酸化硫黄やオゾン濃度測定器やパーティクルカウンターを設置し、大気汚染物質および粒子状物質個数濃度の自動計測を行った。 2014年9月の観測時には太平洋高気圧に覆われ、関西方面からの大気汚染が観測された。過酸化水素やオゾン濃度は、越境汚染の影響を受けていた2013年8月よりも低かった。二酸化硫黄は通常と異なり、上空で高濃度であった。2015年3月の観測時は、大陸からの気塊の影響を受けていたが、二酸化硫黄などの大気汚染物質の濃度は、2014年3月に実施した時よりも低濃度であった。この2年間で実施してきた上空大気観測から、夏期は二酸化硫黄よりも過酸化水素濃度が高いが、寒気期は二酸化硫黄濃度よりも過酸化水素が低い状況となることがわかってきた。寒気期においては、高濃度の二酸化硫黄が輸送されてきても、雲水の酸性化や硫酸塩粒子の生成が抑えられているものと考えられる。 上空大気観測の他に、立山、小矢部市の山間部や富山県立大学内などにおいて、オゾン、二酸化硫黄、PM2.5、粒径別個数濃度や硫酸塩粒子の観測を行った。越境大気汚染の他に、桜島の噴煙の影響も観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘリコプターを利用した上空大気観測法を確立し、これまで国内でほとんどなされていなかった上空大気中の過酸化物濃度の測定を精度良く行うことができた。この新しい観測法により、2013年8月、2014年3月および9月、2015年3月に上空大気観測を行った。これらの結果から、中部日本上空の過酸化水素、二酸化硫黄、オゾン等の動態が明らかになりつつある。夏期の越境大気汚染時は過酸化物が非常に高濃度となることもわかった。硫酸塩粒子生成過程についての貴重な情報が数多く得られた。 地上や山岳域においても多くの大気汚染データが得られ、夏期には桜島の噴煙の影響をうけていることも明らかとなった。ただし、天候のため、冬期のヘリコプター観測を実施できなかった。冬期の硫酸塩生成過程についての評価が今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
確立されたヘリコプターを利用した上空大気観測法により、北陸地方上空の過酸化物、二酸化硫黄、オゾン、エアロゾル粒子個数濃度などの測定を引き続き行っていく。特にこれまで観測が十分でない秋期や冬期にも観測を実施し、寒気期の越境汚染の動態について詳しく検討する。さらにホルムアルデヒドなど二酸化硫黄の酸化を抑制する物質の測定も行い、上空大気中での酸化能力評価や、雲内での硫酸生成量評価を行っていく。 ヘリコプターによる観測の他に、地上や立山などにおいて微量気体成分やエアロゾル粒子、雲水・降水の観測を継続して実施していく。観測データを蓄積し、越境大気汚染や火山噴煙の輸送状況および粒子生成について詳しく検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に進んでいるが、冬期に予定していた上空大気観測が、悪天候続きで実施できなかった。そのため、予定していたヘリコプターチャーター費の使用が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施できなかった寒候期を中心とした上空大気観測の回数を増やし、観測データの蓄積を行う予定である。
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