研究課題
北陸地方上空における大気環境評価のため、小型ヘリコプターを利用した上空大気観測を実施した。高度2000 ft(約600 m)または高度4000 ft(約1200 m)毎に最大10000 ft(約3000 m)まで上昇し、観測を行った。水平飛行中に、ミストチャンバー法により大気中の過酸化水素や、メチルヒドロペルオキシドを採取した。試料採取後、富山県立大学構内へ降下し、速やかに高速液体クロマトグラフを用いて分析を行った。学内への試料輸送後には直ちに次の観測高度へ上昇し、再びサンプリングを行った。この方法により、試料採取後10分以内に分析を行うことができ、精度の良い上空大気中の過酸化物の測定が可能となった。過酸化水素濃度はいずれの観測においても地上付近よりも上空で高濃度であり、夏期や初秋期においては二酸化硫黄濃度よりも高く、上空では二酸化硫黄の雲水内での液相酸化が促進されるものと考えられる。特に、越境汚染の影響を受けた夏期に過酸化水素濃度が非常に高くなることが明らかとなった。3月に行った観測では、過酸化水素濃度は二酸化硫黄濃度よりも低く、寒候期においてはアジア大陸から高濃度の二酸化硫黄が輸送されても酸化剤が不足するため、雲水や降雪の酸性化が抑えられている可能性が考えられる。酸化剤となる過酸化物濃度の増加が冬期の降水の酸性化を促進させるものと考えられる。上空大気観測の他に、立山、小矢部市の山間部や富山県立大学内などにおいて、オゾン、二酸化硫黄、PM2.5、粒径別個数濃度や硫酸塩粒子の観測を行った。越境大気汚染の他に、桜島の噴煙の影響も観測された。
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