研究課題/領域番号 |
25400470
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高木 征弘 京都産業大学, 理学部, 准教授 (00323494)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スーパーローテーション / 惑星大気 / 極渦 / 熱潮汐波 |
研究実績の概要 |
金星極域の特異な温度構造である周極低温域(コールドカラー)は Pioneer Venus 時代から知られていたが (e.g. Taylor et al. 1980),その成因はこれまでわかっていなかった。本研究の結果,周極低温域の形成に熱潮汐波が強く影響していることが明らかになった。熱潮汐波が雲層上端付近の平均子午面循環を強化することにより極域で強い下降流が生じる。この下降流が極域の昇温をもたらしている。成果は Nature Communications に掲載された。 極域の短周期の温度変動の解析も進めた。その結果,Venus Express の電波掩蔽観測で得られた短周期の温度変動が,極渦中に存在する東西波数1,周期4-6日程度の短周期擾乱に伴うことを見出した。擾乱の鉛直構造は直立しており,顕著な熱輸送はみられない。また,基本場の安定性を調べると,擾乱の存在する緯度80度付近で順圧不安定の必要条件を満たしている。こうした特徴は Elson (1984, 1989) と整合的である。現在,これらの解析結果を研究雑誌に投稿準備中である。 さらに,熱潮汐波自体の構造に関する研究も進めた。雲層高度における1日潮の鉛直構造は夜昼間対流成分が卓越し,鉛直流速は平均子午面循環に伴う鉛直流速の10倍程度であることが示された。夜昼間対流は高度 50-70 km に広がっており,雲の原料物質を始めとする物質循環に強く影響していると推測される。実際,Venus Expressの紫外光カメラの観測によれば,太陽直下点の下流側は暗いことが報告されている (Titovet al., 2012)。本研究の結果によれば,暗い模様の地方時依存性をうまく説明することができる。さらに,熱潮汐波と平均子午面循環の相互作用によって,さまざまな時空間スケールの大気波動が励起されている可能性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までに得た金星大気スーパーローテーションに対する熱潮汐波と平均子午面循環の影響についての研究成果の研究雑誌への投稿が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,熱潮汐波と平均子午面循環の相互作用によって,さまざまな時空間スケールの大気波動(高度75 km付近の重力波,雲頂高度の弓状構造,雲中のケルビン波的な空間構造の惑星規模波など)が励起されている可能性が明らかになった。今年度はこうした波の励起メカニズムや大気スーパーローテーションに対する力学的効果についても調査を進める予定である。また,研究雑誌への公表が遅れている研究成果を早急に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究会に出席できなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
コンピュータ関連の消耗品の購入と国内学会出席のための旅費。
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