研究実績の概要 |
本研究でテストフィールドとした新潟県長岡市は比較的温暖な降雪地帯であり、厳冬期でも霙による降水がみられる。雲物理過程のバルクスキームにおいて雨・雪・霰という降水カテゴリを持つ雲解像モデルの降水量などの出力と比較するためには、地上降雪粒子観測においても雨滴、雪片、霰などの降水種毎の降水フラックスの評価が必要となった。本年度は、光学式ディスドロメータによる粒径・落下速度分布から雨滴の成分とそれ以外を分けることで、霙による降水中の雨滴とそれ以外の固体粒子による降水寄与を求めると同時に、湿雪と乾雪を判別する手法を開発した。これをもとに、地上降雪粒子観測データについて、上記の湿雪・乾雪の判別とともに、雲解像モデルとの比較を行うための単位時間あたりの降水粒子別の降水フラックスや粒径分布などを求めた。
本研究では実施期間を通して、前2年分も合わせて5冬期分の降雪粒子観測データ(光学式ディスドロメータおよび気象要素)と、雪氷防災研究センターで冬期に実施している雲解像モデルを用いた当該観測点を含む領域での凖リアルタイム予測計算データを蓄積し、相互比較のためのデータセットを作成した。また、地上観測データと雲解像モデルの出力を比較のために必要な降水フラックスの評価のための質量を推定するパラメタリゼーションを、降水粒子の質量測定から作成するなど、地上降水粒子観測による降水判別手法、降水フラックス推定手法などの改良を行い、長期間での統計的な比較を実施可能した。ただ、地点比較のため、位置ずれ、時間ずれの問題に対してはモデルとの比較における本来的な課題として残った。また、気象研究所において、長岡市を含む領域で、雪と霰の典型的な降雪イベントに対して5km,2km,1km,500m,250mの複数の水平解像度の雲解像モデルによる実験を行い、地上観測データと比較を行い、降雪量の過少予報について解析を行った。
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