研究課題/領域番号 |
25400479
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松清 修一 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (00380709)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽圏終端衝撃波 / ピックアップイオン / 粒子加速 / フル粒子シミュレーション |
研究概要 |
地球で観測される宇宙線のエネルギースペクトルは、数十メガeV付近にピークを持つ。これは宇宙線異常成分と呼ばれ、太陽圏の外縁部に形成される太陽圏終端衝撃波で加速されたものであると長年考えられてきた。ところが、2機のボイジャー探査機が終端衝撃波を通過した際、期待したような粒子加速の徴候は見られず、その原因は大きな謎となっている。本研究では、終端衝撃波の基本構造とその粒子加速器としての能力を高精度のフル粒子シミュレーションを用いて解明する。この際、太陽圏外縁のプラズマに多く含まれるピックアップイオン(PUI)がこれに与える影響を陽に考慮し、さらにこれまであまり注目されてこなかった電子加速についても議論する。 25年度は、比較的計算負荷の小さい1次元計算(空間1次元、速度3次元)を用いて、様々なパラメータに対する衝撃波構造と粒子加速効率の違いを調べた。PUIの相対密度が20%以上になると、衝撃波の磁場波形と静電ポテンシャルの波形が陽に違いを見せるようになる。磁場波形は太陽風密度を反映しやすいのに対して、ポテンシャルは反射PUIのダイナミクスを反映しやすいためである。両波形の違いはマッハ数が大きいほど顕著になる。下流の熱エネルギーの大半(90%以上)はPUIが担うが、拡張されたフット領域で変形2流体不安定性による太陽風プラズマの加熱が若干見られる。PUI相対密度が20%以下なら衝撃波面のリフォーメーションが顕著に見られるが、30%になると抑えられる。リフォーメーションはまた、拡張されたフット領域で不安定性による太陽風の加熱が起こる場合や、太陽風の温度が高い場合にも抑制される。PUIによるポテンシャル波形の変調のため、従来のPUI加速の標準モデルである衝撃波サーフィン加速は見られなかった。一方、衝撃波角を80°以下にすると電子衝撃波ドリフト加速が、60°にすると同イオン加速が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた1次元計算によるパラメータ調査を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
終端衝撃波の2次元(空間2次元、速度3次元)フル粒子シミュレーションを行ってその電磁場構造を調べる。多次元系ではリップルと呼ばれる衝撃波面に沿う方向のイオンスケールの電磁場構造が現れることが一般に知られているが、これがピックアップイオンの存在によってどのような影響を受けるか調べる。遷移層で励起されるミクロスケール波動の特性が多次元化によってどのような影響を受けるかについても注目する。必要に応じて、遷移層の一部だけに注目した周期境界シミュレーションも行う。衝撃波近傍の粒子分布関数を詳細に調べ、粒子加速効率を見積もる。また、被加速粒子の軌道解析を行い、加速機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね予定通り使用した。次年度使用額(13,720円)は端数とみなせる額である。 先日掲載が決定した論文の掲載料の一部として使用予定である。
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