研究課題/領域番号 |
25400480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
今井 一雅 高知工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (20132657)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 木星電波 / モジュレーションレーン法 / 惑星電波放射機構 / 宇宙プラズマ・プラズマ波動 |
研究概要 |
木星電波は1955年に発見されて以来、多くの観測が行われ研究されてきたが、その電波放射機構は完全に解明されていない。世界最高レベルの感度を持つLWA1は、ニューメキシコ大学のグループにより建設された低周波宇宙電波の研究を目的とするアレイアンテナで、LWA1による木星電波観測が2011年12月よりスタートした。LWA1は、256基のアレイアンテナで構成されており、右回りと左回りの偏波を観測可能とするため、広帯域な2系統のアクティブ・ダイポールアンテナで構成され、受信したアナログ信号は超高速サンプリングによりディジタル化されてデータ処理の後、アーカイブされている。 この木星電波の放射機構を解明するために、LWA1で観測されたデータをデータ解析言語であるIDLによって解析できるプログラムの開発を行った。作成したプログラムは、自動的にFITSファイルを探索し、ヘッダの情報を読み取ることができ、自動的に時系列順に並び替えて、配列数・時間軸・周波数軸をヘッダからの情報をもとにダイナミックスペクトラムを生成することができる。また、任意の時間の周波数や強度を抽出や、時間分解能が大きいデータに関しては拡大処理することも可能で、右回り・左回り偏波成分を独立に抽出することも可能である。 今回解析した木星電波のIo-C電波源のデータのダイナミックスペクトラムでは、LWA1の22MHzから28MHzの観測周波数帯で、モジュレーションレーンの縞状構造を明瞭に確認することができた。また、右回り偏波と左回り偏波のダイナミックスペクトラム上で、モジュレーションレーンの縞状構造がつながっていることから、同じ磁極側で放射された電波であることが推定された。今後、LWA1で観測された多くの木星電波のデータの解析をこの手法で行うことにより、木星電波の放射モードを特定する上で極めて重要な情報を得ることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木星からのデカメートル波帯の自然電波放射である木星デカメートル波は、その放射機構を説明するモデルとして、サイクロトロンメーザー理論が提案されている。しかしながら、木星電波の偏波観測データと理論の間の解釈には大きな隔たりがある。本研究では、世界最高レベルの超高感度木星電波広帯域偏波観測が可能となったアメリカのLWA1観測システムを用い、筆者等が開発したモジュレーションレーン法を組み合わせて、電波源の位置と偏波特性の関係を高精度に測定することにより、全く新しい角度からサイクロトロンメーザー理論の検証を行う。これにより、地球や土星等を含めた惑星電波放射機構を統一的に解明するための重要なパラメータを求め、電波観測から惑星電磁圏の様相を調べる突破口を切り開くことを研究目的としている。これに対して、右回り偏波と左回り偏波のダイナミックスペクトラム上で、モジュレーションレーンの縞状構造がつながっている多くの例を見つけることができ、同じ磁極側で放射された電波であるかどうかの検討を行うことができた。これは、当初の目的通りで、本研究で開発された手法によりさらに多くのデータを解析することにより、最終的な描像を明らかにすることが可能となりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、初年度の解析結果をもとに、さらに観測データの収集を行う。このために、初年度と同様の観測を行うために渡米する。また、初年度の解析結果をもとに、サイクロトロンメーザー理論の拡張によるモデリングを行い、米国で開催される国際会議においてその研究成果の発表を行う。また、総合的な観測を行うために、Tracy Clarkeのグループが行っている木星電波の観測データの情報共有を行い、Io-C電波源だけでなく、Io-AとIo-B電波源の偏波観測データの比較も行う。これによって、木星電波源の総合的な偏波特性の把握を行い、サイクロトロンメーザー理論をベースにした、偏波特性を説明することのできる拡張した木星電波放射モデルの構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度の外国出張旅費に若干の不足分が生じる可能性があることから、平成26年度分として留保した。 平成26年度の外国出張旅費の不足分に支出する予定である。
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