研究課題
木星電波のダイナミックスペクトラム解析において、世界最高レベルの感度を持つLWA1は、ニューメキシコ大学のグループにより建設された低周波宇宙電波の研究を目的とするアレイアンテナである。LWA1は、256基のアレイアンテナで構成されており、右回りと左回りの偏波を観測可能とするため、広帯域な2系統のアクティブ・ダイポールアンテナで構成され、受信したアナログ信号は超高速サンプリングによりディジタル化されてデータ処理の後、アーカイブされている。木星電波の放射機構を解明するために、LWA1で観測されたデータをデータ解析言語であるIDLによって解析を行っている。観測されたダイナミックスペクトラムデータは、HDF5(Hierarchical Data Format 5)形式のファイルでアーカイブされるようになった。このため、新たにHDF5形式のファイルを読み込むことが可能なIDLのプログラムを作成した。作成したIDLプログラムにより、任意の時間の周波数や強度を抽出や、時間分解能が大きいデータに関しては拡大処理することも可能で、右回り・左回り偏波成分を独立に抽出することも可能である。今回解析した木星電波データのダイナミックスペクトラムでは、LWA1の11MHzから38MHzの観測周波数帯で、モジュレーションレーンの微細構造を明瞭に確認することができた。また、右回り偏波と左回り偏波のダイナミックスペクトラム上での違いについても新しい知見を得ることができた。今後、さらにLWA1で観測された多くの木星電波のデータの解析をこの手法で行うことにより、木星電波の放射モードを特定する上で極めて重要な情報を得ることができると考えている。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、世界最高レベルの超高感度木星電波広帯域偏波観測が可能となったアメリカのLWA1観測システムを用い、筆者等が開発したモジュレーションレーン法を組み合わせて、電波源の位置と偏波特性の関係を高精度に測定することにより、全く新しい角度からサイクロトロンメーザー理論の検証を行う。これにより、地球や土星等を含めた惑星電波放射機構を統一的に解明するための重要なパラメータを求め、電波観測から惑星電磁圏の様相を調べる突破口を切り開くことを研究目的としている。これに対して、LWA1のデータによりダイナミックスペクトラム上のモジュレーションレーンの微細構造を詳細に調べることができている。これは、当初の目的通りで、本研究で開発された手法によりさらに多くのデータを解析することにより、最終的な描像を明らかにすることが可能となりつつある。
平成27年度は、今までの解析結果をもとに、さらに観測データの収集を行う。この解析結果をもとに、モジュレーションレーンの微細構造について、サイクロトロンメーザー理論の拡張によるモデリングを行い、米国で開催される国際会議(MOP)においてその研究成果の発表を行う。また、総合的な観測を行うために、Tracy Clarkeのグループが行っている木星電波の観測データの情報共有を行い、多くの電波源の観測データの比較も行う。これによって、木星電波源の総合的な偏波特性の把握を行い、サイクロトロンメーザー理論をベースにした、偏波特性を説明することのできる木星電波放射モデルの構築を目指す。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
Journal of Geophysical Research
巻: 120 ページ: 1888-1907
10.1002/2014JA020815
Journal of Geophysical Research, Space Physics
巻: 119 ページ: 9508, 9526
10.1002/2014JA020289