研究課題
基盤研究(C)
既存の地質図幅・空中写真と申請者の取得データを用いて,1/25万縮尺のセールロンダーネ山地の形態線図を作製し、部分的に走向線図も作製した。それらの結果と既存の岩相分布図や重力図、変成分帯などを組み合わせて,広域テクトニクスのフレームワークである大構造を把握した。そして、既存のセールロンダーネ山地の変成岩・深成岩の年代データと、地質構造形成史を対比し、広域テクトニクスについて現時点でのまとめを行った。その結果、セールロンダーネ山地の岩石は複数回の圧縮テクトニクスと引張テクトニクスを受けて複雑な地質構造を示すことが明らかとなった。また,セールロンダーネ山地の広域テクトニクスについて,国立極地研究所や九州大学の地質研究者と討論を行った。これらの結果は、日本地質学会の学術大会と国立極地研究所シンポジウムにて発表されるとともに、論文として学術雑誌に掲載された(Toyoshima et al., 2013など)。さらに、セールロンダーネ山地の変成岩の構造解析と変成作用の解析を進め、圧力上昇を伴う高温条件の獲得の後、温度が低下する中で、珪線石の再結晶を伴うS-テクトナイトの形成が起こり、その後にマイロナイト化作用が起こったことを見出した。マイロナイトを形成させたテクトニクスとして、3種類の候補があることも明らかにした。この結果を国立極地研究所シンポジウムにて発表した。そしてブラットニーパネ,メーニパなど構造解析のキーとなる場所を複数選定した。また、既存の地質図幅・空中写真を用いて,1/25万縮尺のリュツォホルム岩体とやまと山脈の形態線図を作製し、部分的に走向線図も作製して、広域テクトニクスのフレームワークである大構造を把握した。これをスリランカの地質構造と比較して、類似性を整理した。これらの結果を国立極地研究所シンポジウムにて発表し、大構造と変成岩分布との関係についての討論を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の計画であった、1/25万縮尺のセールロンダーネ山地の形態線図の作製、広域テクトニクスのフレームワークである大構造の把握、セールロンダーネ山地の地質構造形成史・変形運動史の再構築、変成岩・深成岩の既存の年代データと地質構造形成史の対比に基づく広域テクトニクスのまとめ、それらの論文化、変形構造とさらなる構造解析・変成作用の解析のキーとなる地域の選定など、多くが達成されている。変形岩の放射年代の測定とEBSDによる構造解析が行われていないが、平成26年度に行う予定であった1/25万縮尺のリュツォホルム岩体とやまと山脈の形態線図の作製と、広域テクトニクスのフレームワークである大構造の把握を行った。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断される。
セールロンダーネ山地でキーとなる地域であるブラットニーパネ,メーニパなどにおいて構造解析と変成作用の解析を組み合わせて詳しく行い、EBSDによる構造解析も進めて、変成作用と変形作用との関係を考察する。リュツォホルム岩体とやまと山脈の形態線図を用いて把握された大構造をもとに,これらの地域において構造解析のキーとなる場所を選定する。キーとなる場所の岩石試料や地質構造データを集めて,大~微細構造の幾何学的・運動学的解析を行う。リュツォホルム岩体ややまと山脈における、岩相分布や地質構造形成史、運動学的解析の文献調査を行う。構造解析が行われていない地域も多いので,それらの場所にて既に採取され国立極地研究所が保管・管理している岩石標本・地質構造データを提供していただき,大~微細構造の構造地質学的解析を行う。文献調査と構造解析の結果を入れて,リュツォホルム岩体とやまと山脈,それぞれの地質構造形成史・変形運動史を構築する。そして,セールロンダーネ山地・リュツォホルム岩体・やまと山脈の地質構造形成史・変形運動史を対比してまとめ,セールロンダーネ山地からリュツォホルム岩体にかけての地域の地質構造形成史・変形運動史を構築する。さらに,それを西方のドロンイングモードランド中央部~西部やスリランカのそれらと対比する。セールロンダーネ山地からリュツォホルム岩体にかけての地域の地質構造形成史・変形運動史に時間軸を入れるため,既存の年代データ(Shiraishi et al., 2008など)を地質構造形成史に関連づけるとともに,強変形の岩石中のジルコンなどを用いて,地質構造の形成年代を求める。これらの結果と既報の変成史や火成活動史を統合して,本地域の広域テクトニクス,ゴンドワナ超大陸形成時の大陸の衝突過程やその後の分裂過程を考察する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Precambrian Research
巻: 234 ページ: 30-46
10.1016/j.precamres.2013.05.010
巻: 234 ページ: 8-29
10.1016/j.precamres.2013.05.017