研究課題/領域番号 |
25400484
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
大藤 茂 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (60194221)
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研究分担者 |
山本 鋼志 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183689)
折橋 裕二 東京大学, 地震研究所, 助教 (70313046)
石崎 泰男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (20272891)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地史 / 後背地解析 / U-Pb年代 / ジルコン / 日本列島 / 古生代 / 中生代 / テクトニクス |
研究実績の概要 |
平成26年度は,西南日本外帯の秩父累帯及び四万十帯を主要な研究対象とし,浅海成古生界~中生界及びペルム紀~白亜紀付加体の試料に含まれる砕屑性ジルコン年代分布のデータベースを作成した。具体的内容は,以下の通り要約される。 ペルム~三畳系砂岩は,概ね堆積年代付近に単一のピークをもつ年代分布を呈し,先カンブリア時代の岩石が広く分布する大陸域から離れた,島弧的環境で堆積したものと考えられた。ただ,例外的に北部秩父帯沢谷ユニット(新改層)の付加体砂岩は,堆積年代付近,約 500 Ma,及び約 1000 Ma にピークをもつ年代分布を呈し,500 Ma,1000 Ma の火成岩類が卓越するハンカ地塊との近縁性を示唆した。ジュラ系砂岩は,堆積年代付近と古原生代にピークをもつ年代分布を呈し,古原生代の火成・変成岩類が卓越する北中国地塊との近縁性を示唆した。 下部白亜系(130~120 Ma)砂岩は,いずれもジュラ紀~前期白亜紀ジルコンを多く含み,同時代の火成岩類が広く分布する浙江省~広東省を後背地にしたと見られた。従来から,これら下部白亜系は華南地方と共通する領石型植物化石群を産することが知られており,本研究はその知見と調和した。なお,北陸地方の同時代層である福井県の手取層群(120 Ma)は,ジュラ系砂岩と同様の砕屑性ジルコン年代分布を示し,北中国地塊を後背地にしたと解釈された。 上部白亜系(80~65 Ma)砂岩は,いずれも①堆積年代付近のピークが卓越し,②古原生代ジルコンを含み,③韓国の火成活動静穏期(158~110 Ma)のジルコンを含まないことから,韓国に近い火成弧の前縁で堆積したものと考えられる。 以上より,西南日本外帯の地質体は,ジュラ~前期白亜紀にアジア大陸に対して相対的に南下した後,アジア大陸及び北陸地方に対して相対的に北上し,ほぼ現位置に至ったものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3年間で採取を予定していた試料をほぼ全て採取し終わり,採取した試料の砕屑性ジルコン年代も概ね測定できた。全国各地の古生代~中生代砂岩の後背地が概ね解明され,日本列島を形成した弧-海溝系の進化が理解されるようになった。本研究の最終目的にかなり近付いたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,当初計画では予定していなかった北海道の中生界砂岩に対象を広げ,より広い視野で,日本列島を形成した弧-海溝系の進化過程とその原因・機構を考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,18年目と老朽化した東京大学地震研究所の誘導結合プラズマ質量分析装置において,度々マシントラブルが発生した。そのため,予定通りの分析が行えず,物品費を繰り越すこととした。また,十分な結果が得られなかったため,折橋裕二(研究分担者)の富山大学への研究打ち合わせを一部平成27年度へと延期し,旅費も平成27年度へ繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に,折橋裕二の物品費および旅費(東京-長野-富山;東京-名古屋)として使用する計画である。平成27年度は,信州大学(長野)において日本地質学会学術大会が実施される。これまでの成果を同学会にて発表するとともに,学会終了後は富山大学での研究打ち合わせも実施する予定である。また,本研究での主要な測定と研究打ち合わせを名古屋大学で行うこととする。
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