研究課題/領域番号 |
25400485
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂子 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20192544)
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研究分担者 |
巽 好幸 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40171722)
佐藤 鋭一 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40609848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幸屋火砕流 / 拡散型火砕流 / 鬼界カルデラ |
研究概要 |
7300年前に鬼界カルデラを形成した噴火では,平均層厚が1m以下の拡散型火砕流である幸屋火砕流が海で隔てられた鹿児島県南部や種子島,屋久島に広く堆積し、当時の縄文文化を一掃した。幸屋火砕流堆積物はガラス組成に幅が見られ,堆積物内でガラスの組成幅が変化する。この幸屋火砕流の流動機構を明らかにするために,堆積物中に残された時間軸に基づいて,流動機構を復元することを目的とし、初年度は幸屋火砕流噴火の時間軸の設定を試みた。鬼界カルデラ縁に位置する薩摩竹島において,最も厚く堆積した幸屋火砕流堆積物の露頭から,上下方向に一定の間隔で,試料を採取し、神戸大学分析機器センターの電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて、マトリックス中のガラス粒子を薄片内で200~300個選び,それらの化学組成,特にSiO2を測定した。測定結果を横軸にSiO2を取ったダイヤグラムに組成幅ごとにガラス粒子の数をプロットし,幸屋火砕流堆積物の下位から上位に向ってどのように変化するかを調べた所、最下位では珪長質ガラスばかりであったが、上方に向かって苦鉄質ガラスが増大し、最上部で再び、流紋岩質ガラスが卓越するという傾向が得られた。珪長質ガラスと苦鉄質ガラスの量比に基づいて幸屋火砕流堆積物の時間軸を確立し,火砕流噴火を複数の詳細なステージに分解した。九州島の幸屋火砕流堆積物についても同様の分析を行い,対比を行ったところ、大隅・薩摩半島に分布する幸屋火砕流堆積物の火山ガラスの化学組成は下位で珪長質ガラスに富み、上位に向かって苦鉄質ガラスが増加することから、噴火初期の噴出物が鬼界カルデラ北方の九州島に到達したことが推定された。また、鬼界カルデラ形成に伴う一連の噴火において、船倉降下軽石,船倉火砕流が発生した後,火道拡大が起こり,幸屋火砕流が噴出し始め,幸屋火砕流噴出中に低SiO2のマグマが噴出したことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
給源カルデラのカルデラ壁北側に位置する薩摩竹島において幸屋火砕流の最も厚く堆積している露頭から試料を採取することが出来たことにより、幸屋火砕流堆積物中の珪長質火山ガラスと苦鉄質火山ガラスの量比の垂直変化を詳細に知ることが出来た。従って鬼界カルデラ形成に係る幸屋火砕流の噴出物について精度の良い時間軸を設定することが出来たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
鬼界カルデラは、現在ほとんど海中に没しているため、唯一陸化している薩摩竹島、薩摩硫黄島のみが、給源近傍の情報を有している。カルデラ北方の九州島に到達した幸屋火砕流は、珪長質ガラスから苦鉄質ガラスへの垂直変化が認められることから噴火初期の火砕流が到達していることが予想されたが、種子島の北部では、幸屋火砕流が分布しない地域が存在することから、全方位に火砕流が同時に噴出したとは考えにくい。今後は、種子島や屋久島などカルデラから南方に分布する幸屋火砕流堆積物においても火山ガラスの化学組成の垂直変化を調べ、方位毎に指向性があるのかどうかを検討し、噴出機構を議論する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
火山ガラスのEPMA分析の機器使用のための費用が予定よりも低額であったため、7047円の余剰が生じた。 第2年度、種子島、屋久島などにおいて採取予定の幸屋火砕流堆積物のマトリックスに含まれる火山ガラスのEPMAによる化学分析の費用に使用する予定である。
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