カルデラ形成を伴う珪長質マグマの噴出様式について、異なる規模のカルデラ火山について検討を行った。VEI 7の鬼界カルデラ形成に伴う幸屋火砕流は,火砕流堆積物のマトリックス中の苦鉄質ガラス片の混入度合いの変化に基づき、屋久島を除く、鬼界カルデラの周囲を取りまく九州島、口江良部島、種子島へは、初期の火砕流がほぼ全方位に流走し堆積したことが明らかになった。 カルデラ南東に位置する屋久島は、標高差が2000mに及ぶ急峻な地形をなし、海岸付近の低地では、5mを超える厚い堆積物を残し、他地域の平均1mと比較すると厚い層厚をなす。標高1500mを超える高地では、層厚が80cm程度で、下半分にサージ状の堆積物を有して居た。また。苦鉄質火山ガラスが基底部から混ざっていることが確認され、他地域の初期の珪長質ガラスのみからなるマトリックスと構成物が異なるが、層厚が厚いことから初期の火砕流が堆積しなかったとは考え難い。従って、屋久島では、地形の影響を受けて、山を駆け上がる一方、上がりきれずにflow backした火砕流が存在したことが推定される。また、平坦な基盤地形の上に堆積した種子島の幸屋火砕流は、上位に堆積するアカホヤ火山灰の直下に火砕流が認められない地点があり、地形的起伏の少ない基盤地形上では、火砕流が通過してしまったことが推定された。 VEI 5の池田カルデラでは、噴煙柱が崩壊し火砕流を形成いた後、地形的な低所には重力流として、高所には火砕サージに移行したことが明らかになった。伊豆諸島神津島838年噴火においても、地形的障害が火砕流の流動様式に影響を与えることが岩相変化より明らかになった。 以上のように、流走する火砕流に対する地形の影響は、その堆積物の岩相や層序に対して大きな影響を与えることが明らかになった。
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