研究課題/領域番号 |
25400486
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
早坂 康隆 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10198830)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 砕屑性ジルコン / U-Pb年代 / LA-ICP-MS / 西南日本 / ジュラ紀付加体 / 四万十帯 / テクトニクス |
研究概要 |
1)LA-ICP-MSによるジルコンのU-Pb年齢測定の精度と再現性の向上のための基礎的研究を行い、測定試料の準備、機器分析、データ解析におよぶ一連の操作をマニュアル化した。このマニュアルに従った処理・操作を行うことで、熟練の程度によらず、十分な精度と信頼性を確保し、再現性良好なデータを取得することが可能となった。 2)九州北部の変成岩類、中国地方の先白亜系、紀伊半島の四万十帯を中心に地質調査をおこない、砕屑性ジルコン・モナザイトのU-Pb年齢測定のための砂岩試料を収集した。 3)既存の試料、および新たに収集したおよそ25試料についてLA-ICP-MSを用いた砕屑性ジルコンのU-Pb年齢の測定を行った。主なものは、奄美大島から関東山地におよぶ四万十帯、北部九州の変成岩類、中国地方西部から北部北上帯におよぶジュラ紀付加体などである。 4)前期ジュラ紀の付加体では、西南日本内帯のものと、外帯の秩父北帯のものとで砕屑性ジルコンの年代分布が大きく異なっていることがわかった。 5)以上の成果を日本地質学会第120年学術大会(2013年9月14日)において、「砕屑性ジルコン・モナザイトの年代学による西南日本のテレーン解析とテクトニクス」と題して発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジルコンのU-Pb年齢の測定に用いるレーザー装置の光路にあるレンズ、ミラー等の多くが耐用年数に達して次々と交換を余儀なくされ、そのために予定外の出費が相次いだが、幸い、院生達の強力を得て、多数の既存試料の分析を進めることができた。 この間に得られたデータについては、TIMSによる信頼性の高いU-Pb同位体年齢が報告されている国内のジルコン試料(KO1: 95.6 Ma;YO1: 282 Ma)をreference standardとして同時に測定することで、その信頼性と再現性が良好であることが確認された。 また、後背地の候補となるべき大陸地域等から報告されているジルコン年齢について、そのデータベースのフォーマットが完成した。 一方で、ジュラ紀付加体の一部について、最も若いジルコンの年齢がマトリクス泥岩の微化石年代より有意に古い例が見いだされ、ユニット毎の後背地の変化を比較する際の同時代性の認識において克服されるべき手法上の問題のあることも理解された。
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今後の研究の推進方策 |
1)新たな試料収集のための地質調査を日本全土に拡大して取り組む。特に、中国地方一帯、中部地方一帯、佐渡島、足尾帯を優先して取り組む。また、後背地の候補としての韓国の基盤岩地域の川砂試料を収集する。 2)既存試料と併せ、砕屑性ジルコン・モナザイトのU-Pb年齢の測定を進める。 3)後背地の候補となるべき大陸地域などの既報データを収集し、データベースに入力する。 4)分析された個々の試料について、後背地の候補として想定されるべき個々の大陸地域がどの程度砕屑粒子の供給に貢献しているか、その貢献割合を統計解析によって求める手法を確立する。手始めに、Constrained Modelに基づく重回帰分析ツールであるGENMIX(Le Maitre, 1979)を用いる。これは、ジルコンのU-Pb年齢の頻度クラスター毎の含有割合をもとに、一つの地質ユニットから分析された複数の試料の含有割合の合計が100%で、後背地の候補として想定される複数の大陸地域の貢献割合の合計が100%になるとのモデルにもとづき、個々の頻度クラスターに現れる誤差の合計が最小になるような解を求めるものである。 5)共同研究者によって砕屑性ザクロ石の分析が行われている試料があり、そのザクロ石のタイプ毎の含有割合とジルコンのU-Pb年齢の頻度分布との相関を統計解析によって求め、後背地を特定する手掛かりとする。
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