研究課題
1)岡山県北部、広島県南部、新潟県の胎内市と佐渡島、長野県内の美濃帯と領家帯、北海道の積丹半島と渡島半島、熊本県甲佐町周辺の各地域において地質調査を実施し、ジルコン年代測定のために中・古生界の砕屑岩、変成岩、花崗岩、火山砕屑岩類を収集した。2)既存の試料と上記によって収集された試料、および共同研究者によって提供された北部九州の花崗岩、阿武隈帯の変成岩の試料を合わせたおよそ30試料についてLA-ICP-MSを用いたジルコン年代の測定を行った。3)砕屑性ジルコンのU-Pb年齢を測定した結果、北海道渡島半島の砂岩試料は最上部ジュラ系で、古い成分は主に北中国地塊由来と考えられること、新潟県内の北部足尾帯と長野県内のジュラ紀付加体のものは、共に類似した年齢構成を有しているが佐渡島のジュラ紀付加体はこれらと全く異なること、阿武隈帯のあぶくま洞周辺のホルンフェルスは下部トリアス系であること、熊本県の竜峰山帯にはデボン系が含まれることなどが判明した。4)火成岩類のジルコンU-Pb年齢の分析からは、佐渡島に夜久野オフィオライトが分布すること、北部九州に前期白亜紀の花崗岩体が多数存在すること、岡山県北部に490 Maの花崗岩マイロナイトが存在すること、広島県南部の白亜紀流紋―デーサイト質結晶凝灰岩は、95 Ma前後と91 Ma 前後の2回の活動ステージに分けられること、北海道渡島半島の花崗岩類は119~105 Maに貫入したことなどが判明した。5)これまで測定されたデータと文献値から、日本列島全体の50万分の1年代地質図を編集した。
2: おおむね順調に進展している
ジルコンのU-Pb年齢の測定に用いるレーザー装置の光路にあるレンズ、ミラーの一部が劣化した影響で、ビームの形状が半月状になり、測定誤差がやや大きくなったが、データーポイントを増やすことで克服した。変成岩から分離された砕屑性ジルコンの測定データを詳細に吟味した結果、ウラン含有量が高く、メタミクト化したジルコンは変成作用時にリセットされた年齢を示す例のあることが判明した。このことは、コンコーダントなデータであっても、その最も若い年齢をもって安易に堆積年代を推定することはできないことを意味する。このことを避けるためには、予めCL像や偏光顕微鏡を用いてメタミクト化したジルコンを特定しておく必要のあることが理解された。平成26年度は、砕屑性ジルコンの供給源としてのポテンシャルの高い花崗岩類の年代測定を多数の試料について実施し、有益なデータが得られたが、そのため砕屑性ジルコンそのものの測定は予定していた数をこなすことができず、計画していた統計解析ができなかった。
1)現在までに、ほぼ日本列島全域を網羅する形で試料の収集を行ってきたが、東北日本や一部西南日本に点在する変成岩類の試料が不足しているので、必要な試料の収集に努める。2)既存試料と併せ、砕屑性ジルコン・モナザイトのU-Pb年齢の測定を進める。3)引き続き、後背地の候補となるべき大陸地域などの既報データを収集し、データベースに入力する。4)測定された砕屑性ジルコンの年齢構成データをもとに、後背地の年齢構成を説明変数とした多変量解析を行い、個々の供給源地の寄与率を明らかにする。5)得られたデータと既報のデータを併せ、日本列島の年代地質図を完成させ、上記4)の統計解析結果をもとに、テレーン毎の供給源地の時空変遷を明らかにして中・古生代テクトニクスの理解へ結び付ける。5)最終年度にあたるため、当初は国際学会での成果発表を予定していたが、その経費をレーザー装置の保守に充てることとする。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 108 ページ: 印刷中
10.1016/j.jseaes.2015.04.006
Mazumder, R. & Eriksson, P. G. (eds). Precambrian Basins of India: Stratigraphic and Tectonic Context. Geological Society, London, Memoirs
巻: 43 ページ: 207-221
10.1144/M43.14
Journal of Geological Research
巻: 2014 ページ: 1-10
10.1155/2014/652484
LITHOS
巻: 208 ページ: 81-103
10.1016/j.lithos.2014.09.002
Geotectonics
巻: 48 ページ: 30-49
10.1134/S0016852114030030