研究課題/領域番号 |
25400488
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀 利栄 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30263924)
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研究分担者 |
小玉 一人 高知大学, 自然科学系, 教授 (00153560)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 三畳紀-ジュラ紀境界 / 海洋酸性化 / 大量絶滅 / 中和 / 放散虫 / コノドント |
研究実績の概要 |
平成26年度は、札幌で行われた国際学会AOGSにて本申請課題に関連したセッションの開催をコンビーナーとして実施したほか、ヨーロッパのシシリア島とトルコ南部の地質体における三畳系-ジュラ系(Tr-Jr)境界の調査とサンプリングを実施することができ、本申請課題について格段の進展があった。また、海外研究協力者の日本招聘を行い、高知大学海洋コア総合研究センターにて、共同研究者とともにTr-Jr境界層に対して磁性特性における新たな研究データを得ることができ議論を深めることができた。 具体的成果としては、1)三畳系-ジュラ系(Tr-Jr)境界層、特にチャートを主体とする深海遠洋堆積物中の単層内サブバンド構造毎の解析が進み、最上部三畳系には、100yr-1000yrオーダーのサブバンドがグローバル(NZ, 日本、トルコなどで)に識別されることが明らかとなった。この事実は、この時期に遠洋深海生物相の活動が世界規模で低下した事を示唆する。2)一見連続層として観察されるTr-Jr境界層を詳細に解析すると、泥岩の頻繁な挟みや、突発的な石灰層の挟みおよびスパイク的化学組成変動などが明確となり、世界的な陸成物質の異常供給が示唆された。3)Tr-Jr境界後のチャートギャップが、パンサラッサ海のみならず、ヨーロッパテチスおよびテチス東端にも識別されることが明らかとなった。これは、Tr-Jr境界直後に珪質骨格生物の生産量が著しく減少した事を示し、本申請課題テーマの「中和される海洋モデル」とよく一致する。4) Tr-Jr境界の二枚貝研究者との議論により、Tr-Jr境界放散虫群集組成変動データの新たな解釈の可能性が明らかとなった。つまり、Tr-Jr境界において絶滅グループとサバイバルグループがある事が知られていたが、二枚貝フォーナと同様に環境変動耐性の差(沿岸域優勢vs遠洋域優勢生物相の差)と解釈可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較検討のために海外(ヨーロッパ地域)の重要な三畳系-ジュラ系境界前後の地層の試料採取を実施する事ができ、グローバルな比較検討が試料ベースで可能になったことや、海洋の環境指標となる含有酸化鉱物の新たなデータが取得された事が大きい。またサブベッド単位での堆積構造や微化石含有率の違いやヘマタイト鉱物種の含有率の違いなど詳細な検討が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
ニュージーランドおよびトルコにおいて採取したTr-Jr境界層のさらなる詳細な解析と、本邦産Tr-Jr境界層との亜単層(Subbed)オーダーでの比較検討を行う。また、トルコ産Tr-Jr境界層の酸化鉱物特性の検討も実施する。 最終的には各データの統合を行い、H27年度中に「中和される海洋モデル」の最終的な構築と国際学会での発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果を放散虫研究集会特別号No.15(査読Journal&テラパブよりオープンアクセス)として印刷する予定で印刷費を計上していたが、査読編集作業が長引き、冊子の最終的な編集作業と印刷・校正が次年度に持ち越したため。また、海外協力研究員の招聘を行ったが、研究者の都合で共同研究の日程が当初予定より短くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本申請課題の成果の一部(ベースデータの部分)を、オープンアクセスであり、かつ査読付きJournalの特別号冊子の印刷費にあてると同時に、学会発表旅費(海外)および論文別刷代などの成果公表のために使用する計画である。また本年度の予算に余裕があれば、当初アクセスが難しくキャンセルしていた中国のTr-Jr境界層の調査が中国側のOKで可能となりそうなので、その調査費用として使用する。
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