研究課題/領域番号 |
25400490
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
可児 智美 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60332863)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ペルム紀 / ストロンチウム同位体 / 海洋 / 炭酸塩 / 大量絶滅 |
研究実績の概要 |
顕生代海洋ストロンチウム同位体比の永年変化は,ペルム紀中期-後期境界で特異な最小値をとる。海洋への大陸由来フラックスとマントル由来フラックスのバランスは,ストロンチウム同位体最小値の時期を境に古生代型から中生代型へと大転換したと考えられるが,その原因は未解明である.さらに,当時起きた顕生代最大規模の生物絶滅事件との関連も示唆されるが、古生代型から中生代型への生物相の劇的変化を引き起こした地球規模の表層環境の変化との因果関係についてもあきらかになっていない。そこで本研究では,世界各地で採取された当境界をまたぐ連続性のよい地層を対象に、ストロンチウム同位体比および炭素同位体比他の各種古環境指標値を解析し,同位体組成変化とほぼ同時期に起きた地球規模の環境変動の因果関係と根本原因の解明を試みた.これまでの本研究期間で,ペルム紀中期-後期境界を含む東日本岩井崎,南中国四川省、クロアチアVelebit山地,ロシアなど世界各地から採取された炭酸塩岩のストロンチウム同位体比分析を実施した.その結果,当時の海水ストロンチウム同位体比最小値はこれまで考えられていたペルム紀中期ガダルピアン世Capitanian期以前のWordian期に開始していたことを明らかにした.また岩井崎石灰岩では不明だったペルム紀中期-後期境界について制約を与え,陸棚礁崩壊時期がペルム紀中期ガダルピアン世Capitanian期に開始していたことを示した.化石層序などとあわせて詳細なストロンチウム同位体比変化の時期を特定し,氷床増減による大陸フラックス変化のモデルについて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画したほとんどの各研究項目について分析を実施することが出来たため。 当初計画通りペルム紀中期-後期境界を挟むペルム紀中部―上部の連続試料(東日本岩井崎,南中国四川省、クロアチアVelebit山地)について,炭酸塩岩のストロンチウム同位体比分析を実施した.さらに追加で得られたロシアで採取されたボーリング試料についても同位体分析を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
前年までの結果をふまえて,より重要な層準の岩石試料を効率的に判別し,ひきつづきストロンチウム同位体組成分析と主成分・微量元素組成分析を実施する.これまでの成果で,最小値の開始時期については,これまで考えられていたより古く,キャピタニアン期以前のWordian期に開始したことがわかったが,フズリナ層序とあわせてより詳細に開始時期を特定する.最小値の前後の同位体比変化は顕生代で最大で最も急激であるので,ペルム紀ガダルピアン世の試料を中心に時間幅を広げて分析を実施し,変化速度についても検討する.
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