研究課題/領域番号 |
25400495
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上松 佐知子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50466661)
|
研究分担者 |
丸岡 照幸 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80400646)
指田 勝男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60134201)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | オルドビス紀 / コノドント / 筆石 / 地球化学 / 同位体 / 古環境 |
研究概要 |
本年度は主要な研究活動として野外調査と化石層序および岩相層序の検討を行った。研究計画にある「コノドント等微化石を用いた複合生層序の確立」ならびに「堆積岩類の同位体比等の分析」に関連して、マレーシア国ペリス州北部のタイ・マレーシア国境付近およびマラッカ海峡北部に位置するマレーシア国ランカウィ諸島ラングン島おいて野外調査を実施した。このうちラングン島西部の黒色堆積岩からなる海岸を主要な露頭として集中的に調査を行い、合計4セクションの詳細な岩相を記載した。セクション1は層厚240 cmで、筆石化石を含む黒色頁岩と珪質な細粒~中粒砂岩の互層からなる。セクション2は厚さ1,340 cmの黒色頁岩ならびに珪質細粒砂岩を構成要素とする。セクション3と4はそれぞれ層厚178 cmと272 cmで、前者は珪質細粒砂岩、後者は黒色泥岩を主体とする。これらのセクションは互いに小規模な断層を介して接するが、ずれは比較的小さく、下位よりセクション1、2、3、4の順に塁重すると考えられる。総層厚は約20 mである。これらの砕屑岩層は下位のオルドビス系石灰岩および上位のシルル系石灰岩とそれぞれ断層で接する。調査セクションから合計約140個の岩石試料を採取した。またセクション最下部と最上部において筆石化石を採取した。 現在これらの試料からコノドント・放散虫化石の抽出を試みている。分類・層序学的検討には至っていないものの、これまでの古生物学的研究から、セクション1あるいはセクション2最下部にオルドビス紀-シルル紀境界が存在すると考えられる。また岩石学的検討から、本調査セクションはこれまで考えていたよりも粗粒な堆積岩(主に細粒砂岩)から構成されることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の出発点となる野外調査の日程が当初予定よりもやや遅れたが、概ね計画通りに進んでいる。今後化石の抽出・化学分析を予定に沿って進めていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の野外調査で採取した岩石試料の分析を進める。各試料について、一部を化学分析に用い、残りを岩石薄片および化石抽出用の試料とする。 古生物学的研究として、黒色頁岩中に含まれる筆石、コノドントおよび放散虫化石をそれぞれ検討する。筆石化石の同定に関しては、頁岩試料をSEMで直接観察すると共に、樹脂に封入したのちデジタルマイクロスコープを用いて標本の撮影を行う。コノドント化石は通常のフッ酸処理によって抽出を目指すが、これが困難な場合は、頁岩片を薄く剥離させたのち実体顕微鏡を用いて観察する方法を取る。放散虫化石はフッ酸処理によって抽出する。従来の処理よりも薄い濃度(5%以下)のフッ酸を用い、6時間・12時間・24時間に時間を区切ってより丁寧な処理を行う予定である。岩石学的研究について、黒色頁岩の薄片作成により微岩相を観察し、粒径、堆積構造等岩相の変化を読み取る。これらのデータから、本研究地域における堆積場の変化を考察する。地球化学的分析では、黒色頁岩類の全有機炭素量(TOC)、有機物の炭素同位体比(δ13C)、窒素同位体比(δ15N)および硫化物の硫黄同位体比(δ34S)の測定を行う。 また追加の野外調査を実施し、頁岩層下位の石灰岩から試料の採取を行うと共に、これらの古生物学的、堆積学的ならびに地球化学的分析を行う予定である。 得られた成果は、国内学会・国際学会および学術雑誌にて随時公表していく
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度に予定していた野外調査がやや遅れ、調査に係る金額が年度末まで確定しなかったため。特に現地から郵送した試料の一部が年度内に到着するかどうかによって年度内の支払額が異なるため、残額に余裕を持たせておいたところ、最終的に未使用分が発生した。 新年度に到着した試料の郵送費と試料処理に伴う薬品等の購入費に充てる予定である。
|