外骨格を球状に丸める球体化防御姿勢は,過去5億年にわたって多くの節足動物が独自に採用してきた効果的な防御様式である。この成立には,異なる骨格部位に位置する凹凸を咬合させることが必要である。しかし、骨格の形状はそれぞれが独自にそして不可逆的に決定してゆくため、球体化を見越した凹凸を備えることは遺伝子の作用のみでは不可能である。現生甲殻類と化石節足動物の三葉虫は、咬合部位に接触感覚毛もしくはその痕跡を必ず伴っており、さらに、脱皮に伴う骨格硬化の遅速が、遠隔凸凹の形状に対応することが明らかとなった。つまり、骨格形状の最終決定には,その直前に知覚システムのフィードバック機構が介在することを示唆する。
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