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2013 年度 実施状況報告書

近世以降の瀬戸内海における環境と生態系の変遷に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25400498
研究種目

基盤研究(C)

研究機関島根大学

研究代表者

入月 俊明  島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60262937)

研究分担者 野村 律夫  島根大学, 教育学部, 教授 (30144687)
廣瀬 孝太郎  福島大学, 共生システム理工学類, 特任助教 (60596427)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード瀬戸内海 / 貝形虫分析 / 播磨灘 / 珪藻分析 / 14C年代測定 / 粒度分析
研究概要

今年度は研究初年度であり,まず播磨灘北部ですでに採取され,研究室に冷凍保管されていた225 cmのコアについて,貝形虫分析・堆積物粒度分析・14C年代測定を行った.また,7月8日に播磨灘南部津田湾の水深11.6 m地点において,今回の科研費で作成した1.5 m長の押し込み式コアラーを用いて99, 93 cmの2本のコアを採取した.さらに,周辺海域においてエクマンバージ式グラブ採泥器を用いて表層堆積物を採取した.コアについては半割した後に記載と土色計による測定を行い,軟X 線用試料を採取した.その後,1 cmの厚さにスライスし,貝形虫分析・珪藻分析・粒度分析・14C年代測定等に使用した.
結果として,播磨灘北部のコアは,14C年代測定の結果,過去約2000年間の堆積物であった.貝形虫分析の結果,種多様度は弥生温暖期,中世温暖期,および小氷期後の温暖期に高くなる傾向が認められた.また,貝形虫群集の因子分析の結果に基づくと,海水循環は温暖期に良くなり,小氷期以降,水塊の貧酸素化が顕著になる傾向が認められた.また,高度経済成長期では有機汚濁に耐性のある種が急増した.一方,播磨灘南部のコアは,14C年代測定の結果,過去約1000年間の堆積物であることがわかった.貝形虫分析の結果,日本沿岸に生息する42種が認められた.そのうち,優占種は3種で,これらが時間とともに交代することが明らかになった.具体的には小氷期には砂混じりの内湾奥泥底を好む種が最も優占し,20世紀以降は有機炭素濃度が高い泥底に優占する種が増加し,高度経済成長期にこの種がピークに達した.20世紀以降の変化は珪藻分析による赤潮指標種やL*値の時系列変化と調和的であった.
以上の様に,人為的環境改変の影響はもちろん,過去数千年間の自然状態での環境変化が生態系へ影響を与えている可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度は当初の計画通り播磨灘でのコア・表層堆積物採取を行うことができ,種々の分析も概ね行うことができた.これらの結果から,播磨灘において,環境変化と生態系との間に相関関係がある可能性が示唆され,今後2年間,他地域での研究を行う上で意義が大きかった.さらに,関連する成果に関しても数編の論文として公表でき,イタリアローマで開催された貝形虫に関する国際会議や島根大学で開催された地学団体研究会におけるシンポジウム等で発表も行うことができた.

今後の研究の推進方策

今後は計画通り瀬戸内海の播磨灘以外の閉鎖性海域において,平成25年度と同様の調査・分析を行って行く予定である.また,年代の精度が播磨灘のコアに関してあまり良くないので,14C年代測定用の試料を追加し,分析を依頼する.CHNS分析結果のデータも少ないため,追加分析を行って行く予定である.

次年度の研究費の使用計画

計画通り使用してきたが,年度末に1万円未満の残額があった.平成25年度の研究で使用する予定の物品等は無かったため,次年度に繰り越すことにした.
平成26年度で調査を行う海域(燧灘)の海図等の購入に充てる予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 珪藻トピック 第1回珪藻の化石から過去の環境を探る2013

    • 著者名/発表者名
      廣瀬孝太郎
    • 雑誌名

      Diatom

      巻: 29 ページ: 58-60

  • [雑誌論文] 超音波印加による珪藻分析のための簡便な堆積物処理法2013

    • 著者名/発表者名
      廣瀬孝太郎・吉岡 薫・入月俊明・岩井雅夫・後藤敏一
    • 雑誌名

      第四紀研究

      巻: 52 ページ: 213-224

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 岡山県児島湾における密度流拡散装置周辺の228Ra/226Ra 比の深度別変化2013

    • 著者名/発表者名
      野村律夫・辻本 彰・福田賢一・石黒貴裕
    • 雑誌名

      Laguna

      巻: 20 ページ: 73-87

    • 査読あり
  • [学会発表] Temporal variations of ostracods, diatoms, and environmental factors over the past several hundred years in the Seto Inland Sea, Japan-with relation to anthropogenic influence

    • 著者名/発表者名
      Irizuki, T., Yoshioka, K., Sako, M., Yasuhara, M., Hirose, K.
    • 学会等名
      17th International Symposium on Ostracoda
    • 発表場所
      Rome Tre University
  • [学会発表] 瀬戸内海のコア試料分析に基づく最近の環境と生物変化

    • 著者名/発表者名
      入月俊明・吉岡 薫・廣瀬孝太郎・河野重範・野村律夫
    • 学会等名
      地学団体研究会第67回総会
    • 発表場所
      島根大学
  • [学会発表] ボーリングコアからみた完新世の古環境変化と大阪平野の発達史

    • 著者名/発表者名
      廣瀬孝太郎・入月俊明・三田村 宗樹・吉川周作
    • 学会等名
      地学団体研究会第67回総会
    • 発表場所
      島根大学

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公開日: 2015-05-28  

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