研究課題
今年度は,瀬戸内海西部の大分県別府湾北東部守江湾周辺で試料採取・分析を行い,その結果と他地域での結果を比較検討した.守江湾は現在でも稀少動物が生息している閉鎖的海域である.このような守江湾とその周辺海域において,12地点から採泥器を使用して表層試料を採取した.また,水深10 mの1地点から押し込みコアラーを用いて,2本のコア試料(MOB-1:コア長110 cm,MOB-2:コア長80 cm)を採取した.これらの試料を用いて,貝形虫分析,CHNS元素分析,粒度分析,XRF分析などを行った.表層試料のXRF分析の結果,Zn, Pb, Cuなどの重金属濃度は環境基準値よりも低く,重金属汚染はないと判断された.コア試料は全体を通して数層準に貝密集層を挟む均質なシルトで構成され,貝殻の14 C年代測定を行った結果,コア最下部の年代は,約3200年前と見積もられた. MOB-2コアを用いたXRF分析の結果,重金属濃度は,コア全体を通じて,環境基準値よりも低く,高度経済成長期でさえ,本研究海域ではこれまでに重金属汚染は起きていないことが判明した.貝形虫に関しては,MOB-1コアから少なくとも60種が産出した.主な種は有機物を好む閉鎖的内湾奥~中央部泥底種で,有機汚濁耐性種はコア深度20 cm付近より個体数が急増し,高度経済成長期の人為的影響によると推定された.また,葉上種の個体数に明瞭な増減の変動が認められた.これは弥生時代以降の相対的海水準変動や気候変動により藻場が拡大・縮小したことに関連している可能性が示唆された.このコアの結果と比較するため,平成26年度に対象とした燧灘コアと播磨灘北部コアの追加分析を行い,さらに,陸奥湾で採取されたコアについても種々の分析を行った.その結果,お互い同調した環境変動や貝形虫群集の100年から1000年スケールの周期的な変動などが明らかとなった.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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