研究課題/領域番号 |
25400499
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
近藤 康生 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (90192583)
|
研究分担者 |
栗原 行人 三重大学, 教育学部, 准教授 (10446578)
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 教授(Professor) (30262843)
松原 尚志 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30311484)
中尾 賢一 徳島県立博物館, その他部局等, 上席学芸員 (40372221)
佐々木 猛智 東京大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70313195)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 貝化石 / 現生種 / 最古記録 / 進化 |
研究概要 |
今年度は,現生種タマキガイとその祖先種トドロキガイについて,原殻の観察や同位体分析などによって殻成長の解析を行った結果,トドロキガイからタマキガイへ進化する際に,卵サイズを大型化させるとともに,殻成長が鈍化するタイミングを遅らせ,さらに寿命を延ばすことで成貝サイズも大型化したことが明らかとなった。このことは,トドロキガイからタマキガイへの進化に際し,繁殖戦略がよりK戦略寄りに変更されたと解釈できる。 また,これまでタマキガイ化石が報告されている上総層群野島層(2.0Ma)産標本がタマキガイであることを確認した。一方,トドロキガイ化石が多産している穴内層では,3.1Maから2.7Ma層準までトドロキガイが産出しているにもかかわらず,タマキガイは全く産出していないことから,タマキガイの出現は2.7-2.0Maの範囲に限定される。 さらに両種の色彩パタンについても比較研究を行い,寒冷化に伴い季節性が顕著となった環境下において,色彩パタンが年輪形成に合わせてリセットされることも明らかとなった。 この事例に加えて,更新世に現生種が進化したことが知られるキサゴ類についても,同位体分析による殻成長の復元を試みた結果,夏季における成長停滞が確認され,肉眼観察でも年輪が確認できること,したがって,成長を復元できることが明らかとなった。 これらのほか,バイとその祖先種,およびトリガイとその祖先種について,得られている同様の検討事例を踏まえて,北西太平洋温帯域における海産貝類種分化のモデルを提示することができた。このモデルは,寒冷化に伴って,熱帯性・亜熱帯性の貝類が分布を南に縮小させた時期に,その分布北縁域において,より内湾的な海域の小集団が低水温に耐性を持つように進化することによって,近縁な温帯種が出現した,と要約できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,現生種貝類化石の最古記録を特定する作業を行いつつ,現生種貝類の祖先種を特定しその進化的な背景を明らかにすることを目的としている。現時点では,対象とした分類群がまだ少ない点は課題として残るものの,特定分類群については目的をほぼ達成できたこと,また,種分化のモデルもできたことから,上記のように評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにできたトドロキガイ-タマキガイの事例にならって,より多くの進化系列を対象として研究を進める。また,進化系列の解明には至らない事例についても,最古化石記録の確認作業を進めていきたい。さらに,これまでは黒潮域の貝類を主な対象として進めてきたが,親潮域の貝類についても視野を広げて,調査を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は,種々の時間的制約により標本調査が十分できなかったため。 今年度は,九州大学をはじめとする博物館に所蔵されている化石標本を検討する旅費に充てる予定である。
|