研究課題/領域番号 |
25400501
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小林 文夫 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 名誉教授 (70244689)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 古生代後期有孔虫 / フズリナ類 / 生層序 / 群集組成 / 系統進化 / 多様性 / 秋吉石灰岩 / 地質構造の再検討 |
研究実績の概要 |
本研究は日本産古生代後期の有孔虫化石の生層序分布や種単位での群集組成をもとにして、地域間・地帯間におけるそれらの種多様度、群集組成の相違や相関関係を明らかにすることを目的としている。 昨年度の研究成果と体験から、本年度は秋吉石灰岩層群の、特に石炭系‐ペルム系境界層に的を絞り、野外調査と石灰岩サンプリングを行った。石灰岩岩石薄片作成と顕微鏡観察、フズリナ類と石灰岩相のデジタル画像作成を行い、文献調査と並行して、筆者の手元にある国内外の同時代のそれらと比較検討した。今年度の成果は以下の3点に要約される。 1.石炭紀後期からぺルム前期(MoscovianからAsselian)の秋吉石灰岩層群は13のフズリナ化石帯に区分され、相対的な時間軸が設定される。 2.Moscovian前期・中期とGzhelian中期・後期では日本に特有なフズリナ群集が識別される。一方、Moscovian後期からGzhelian前期とAsselianではテーチス海域の要素が少なからず認められ、これらを基にしてフズリナ化石帯や群集組成の国際対比が可能となる。 3.群集組成の多様性に関しては、MoscovianからKasimovian中期では多様度が低い。Kasimovian後期から徐々に多様度を増し、Asselianでピークに達する。その後、Sakmarianになると多様度は再び低くなる。次のArtinskian前期で一時的に回復する。フズリナ化石群集の多様度の盛衰の背後にはフズリナ化石の進化機構やゴンドワナ氷床の拡大・縮小による汎世界的な海水準変動が色濃く反映されていると考えられ、これらの論証や議論に制約条件を与えることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石灰岩薄片作成と顕微鏡観察、特に薄片作成に1日平均8時間で計6カ月近くを要した。今年度の石灰岩サンプル数は510、薄片枚数は4557に達した。薄片作成に多大な時間を要することから、初年度に実施した一の谷層を含め、当初予定していた調査地域での研究は秋吉石灰岩の研究が一段落してからに延期することにした。研究の目的に変わりはないが、調査地域を限定したほうが精度と信頼度の高い研究ができると判断したからである。秋吉石灰岩での長年にわたる研究成果の蓄積もあり、「研究成果の概要」に記したように国際的な関心を呼ぶような成果があげられたと考えている。このようなことから当初の目標はほぼ順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
秋吉石灰岩層群全体に及ぶ一連の研究が一段落するにはもうしばらく時を要すると考えている。とはいえ野外調査・薄片作成・鏡下観察に明け暮れているわけにはいかない。まずは研究成果の一部を国内外に問いたいと思い、同石灰岩石炭紀後期‐ペルム紀前期のフズリナ類に関するモノグラフ刊行を意図し、昨年末から日々原稿作成に励んでいる。一方、原稿作成中に国内の石炭紀後期とペルム紀前期後半の群集組成の再吟味と追加資料の必要性が生じてきた。このため、2015年度は、美濃帯数地(郡上八幡、濃飛国境、舟伏山、敦賀)での調査研究を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた秋吉石灰岩の野外調査が残額不足で実施できなかったため、次年度行うことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
秋吉石灰岩で3泊4日の野外調査を次年度行う。
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