研究課題/領域番号 |
25400502
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
重田 康成 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30270408)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白亜紀 / 中生代最末期 / アンモナイト / 絶滅 / 化石層序 |
研究実績の概要 |
北太平洋地域の中生代最末期の海洋生物相を理解するために、平成26年5月30日~6月5日まで北海道において、また平成26年7月7日~7月19日までアラスカにおいて、白亜系の地質調査を行った。いずれの地域においても、高精度のルートマップと柱状図を作成し、地質構造、岩相層序、堆積相、化石の産状について詳細な観察を行い、岩石・化石試料の採集を行った。 北海道・中頓別地域の最上部白亜系の地質調査の結果、カンパニアン階からマーストリヒチアン階上部までのアンモナイト群集が確認できた。特に、層準ごとに特徴的なゴードリセラス科アンモナイトが多産することを確認し、これらのアンモナイトが北海道のマーストリヒチアン階の高精度化石層序に有効であることを確信した。 前年度に引き続きアラスカ南部のタルキートナ山地のアルフレッドクリーク沿いの地質調査の結果、これまで確認できていなかった白亜紀最上部のマーストリヒチアン階下部を特徴づけるアンモナイト群集を発見した。この群集は既にカナダ・バンクーバー島から知られていたが、地層の分布が断片的であるため、これまで他の群集との時代関係については不明であった。今回、これらの群集が連続セクションで観察できたことから、北太平洋各地にみられる群集間の時代関係がより明確になった。 北海道・厚岸地域の最上部白亜系から前年度までの調査に際に得られたマーストリヒチアン階中部から上部までのアンモナイト群集について、分類学的研究と層序分布の詳細な検討を行い、大型化石層序と古地磁気層序の統合に関する論文を学術雑誌に発表した。北海道・穂別地域のマーストリヒチアン階下部から発見した新種のアンモナイトに関する研究成果を学術雑誌に発表した。また、北海道やサハリンのマーストリヒチアン階アンモナイトの高精度化石層序の概要を日本古生物学会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アラスカ南部・タルキートナ山地での地質調査は、天候や林道の状態に大いに左右される。今年度は、川の増水の影響で、調査予定地域へのアクセスが困難となったため、昨年の調査地域をさらに詳細に調査した。その結果、これまで見出していなかった化石群集を発見することができた。 北海道での地質調査は10月が最適であるが、エゾシカ猟の解禁のため、国有林内への入林許可証が得られず、昨年度から調査ができない状況である。そのため、昨年断念した中頓別地域の地質調査を6月上旬に行った。調査で得られた化石試料は、国立科学博物館において、順調に剖出作業を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、野外調査として、アラスカ南部のタルキートナ山地および北海道において、これまでの地質調査の補足調査を行い、岩相層序、堆積相、大型化石の種構成や各種の層序分布を明らかにする。採集した化石の剖出作業を行うと共に、地質調査のデータを総合的にとりまとめて岩相層序や化石の分類学的研究を進め、化石群の内容を把握する。これらの結果から、アンモナイトによる高精度年代層序、化石層序と古地磁気層序の統合、イノセラムス類の絶滅タイミング、海洋生物の多様性変動を議論する。本研究の成果を、関連する学会や集会において発表すると共に、学術雑誌などで公表する。
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