研究課題/領域番号 |
25400503
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中澤 努 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (50357620)
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研究分担者 |
上野 勝美 福岡大学, 理学部, 教授 (90241786)
川幡 穂高 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20356851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ペルム紀 / 古生代 / 礁 / パンサラッサ / 気候期 / 微生物岩 |
研究実績の概要 |
当該年度は,前年度に秋吉台帰り水ドリーネ南方で掘削採取したコア試料(80m長)の解析をすすめた.全深度にわたり半割・エッチング処理したコア試料をルーペを用いて観察し,2分の1スケールでスケッチしながら,岩相の1次記載を行った.また,深度約1mごとに,代表する岩相のサンプルを分取し,大型薄片を作成した.薄片は鏡下観察をするとともに,全試料をスキャンし,電子画像としてデータ保存した.含有するフズリナ類の概査から,コアはアルティンスキアン期の石灰岩を主体とすることが明らかとなった.また,既存の同時代の石灰岩コアには巨大なオンコイドが認められるが,本コアにはオンコイドは僅かしか認められないことから,オンコイドの産出は側方に大きく変化することが明らかになった.しかし,本コア試料の上半部に多産する微生物岩は,薄片観察により,オンコイドのコーテックス部分と同様の,分類群不明のチューブ状生物とシアノバクテリアと思われる微少なフィラメントを含むミクライト質の微生物岩であった.つまり巨大オンコイドを形成する微生物類は同時代の秋吉石灰岩から広く産出することが確認された.コア下半部にはLime-mudstoneを挟むようになるが,テクスチャーの詳細観察によりこれらは干潟堆積物であることが確認され,この時代に礁の堆積システムも変化している可能性が示された. また既存コアを用いた研究として,秋吉ではアルティンスキアン期に微生物岩が排他的に多産することを明らかにし,それが地球規模の気候期転換期に相当し,この時期に秋吉に代表されるパンサラッサ海の環礁の生態系・礁堆積システムが大きく変化した可能性について論文をとりまとめ,国際誌に発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にほぼ1年間かけて特別天然記念物現状変更許可申請をし掘削採取したコア試料について,当該年度は詳細なコア観察・記載を実施することができた.コアの岩相の薄片観察もひととおり終了したことで,さらに詳細な解析をすすめる準備ができたといえる.よって研究計画2年目については概ね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
コアの岩相観察・記載をひととおり終えたため,今後はさらに詳細な解析をすすめる.岩相変化をとりまとめ堆積サイクルの解釈をすすめるとともに,含有するフズリナ類の詳細な検討により時代決定をする.また,酸素・炭素安定同位対比測定を実施し,微生物岩産出層準を中心に,同位体比がどのように変化するかを続成層序の観点から検討したい.得られた成果については随時発表していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査でレンタカー同乗により当初予定よりも旅費が少なく済んだため.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度のとりまとめのため,秋吉石灰岩の現地調査旅費として有効に使用したい.
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