研究課題
今回の課題研究を通して,世界各地の様々な年代の蒸発岩を採取し,その岩石学的特徴の記載,流体包有物の化学分析手法の開発,および全岩の同位体分析手法の開発を進めた.期間内には2つの画期的な成果が得られた.一つは,蒸発岩類の年代測定についての新たな知見がえられたこと,もう一つは,蒸発岩のもととなった塩水(海水)の供給源について,概要との交換や後背地からの物質の寄与について定量的な検討を可能にしたこと,である.前者については,これまで形成した時代が不明であったタイ中部の蒸発岩体の石膏鉱床について検討をおこない,岩石学的・鉱物学的特徴から初生的な石膏ではなく,一度脱水して硬石膏になった後に再び水和して二次石膏が晶出したことが明らかになった.相変化や鉱物粒子の変形は激しいものの,その硫黄同位体・ストロンチウム同位体比は明らかに海水の値を保存しており,その時代は石炭紀であることが判明した.また,後者は中新世メッシニアン塩分危機の蒸発岩の流体包有物の元素組成から,陸水起源の主要元素の混入はなく,ほぼ純粋な海水起源であることが判明した.また,そのオスミウム同位体比から,メッシニアン塩分危機では外洋(北大西洋)からのオスミウムの供給よりも,周辺流域からのオスミウム供給が卓越していたことが判明した.これは,ゲートウェイを通した北大西洋との海水の交換が著しく低下していたことを意味し,簡単なモデル計算から北大西洋との海水交換は,塩分危機の前後に比べて30分の1程度まで低下していたと結論した.
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件) 備考 (5件)
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