研究課題
本研究では申請期間内に,1)δ-AlOOH相において水素結合の対称化はどの程度の圧力で起こり得るのか?2)生じる場合には,水素結合の対称化前後において構造的な相違や物理的性質の変化はどのように生じるのか?さらに,3)異なる化学組成を持ち同一の歪んだルチル型構造をとる鉱物群や類似する構造において,組成変化によって高圧下における水素結合の振る舞いは異なるのか?という3点を解明することを目標として研究を進めてきた.1, 2)に関しては8 GPa付近での圧力誘起相転移を明らかにした(論文として公表).また,引き続き行った12 GPa付近までのX線回折実験からは厳密な意味での水素結合の対称化は確認できなかったが,最終形態へ移行しつつあることを確認することができた.また,水素結合様式の対比実験として,微量のAlとHを含有する無水鉱物のMgSiO3相に関した実験を進め,放射光共同利用実験や中性子回折実験から水素位置に関する情報を得た(論文準備中).これらの結果を受けて,最終年度は,2年目までに合成に成功しているAlを含有するphase D相に関する放射光共同利用(PAC. 2013G127, 2014G081)による単結晶放射光X線回折実験を行った.その結果,Alを固溶した場合での水素位置の精密化に成功し,構造が類似する鉱物種における水素結合様式について議論するための情報を得た.合わせて,微量のAlの席占有様式が明らかとなり,組成変化に伴う構造変化が生じることを新に明らかにした(論文準備中).なお,導入した偏光顕微鏡と画像記録システムにより,合成実験生成物の評価過程が大きく効率化された.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
European Journal of Mineralogy
巻: 28 ページ: in press
10.1127/ejm/2016/0028-2526
American Mineralogist
巻: 100 ページ: 1483-1492