研究課題/領域番号 |
25400508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
荒川 洋二 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00192469)
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研究分担者 |
松井 智彰 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40295233)
池端 慶 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70622017)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 灰長石巨晶 / 微小包有物 / 島孤火山 |
研究概要 |
日本列島の島孤に散在的ではあるが、多くの火山で普遍的に産する灰長石巨晶について、伊豆ー小笠原孤、および九州ー琉球孤の火山を中心に灰長石の特徴、特に化学組成、鉱物学的・結晶学的特徴を調べ、また今まであまり明確にされていなかった微小包有物(鉱物、そのほか)について焦点をあて、研究を実施した。 25年度は主に、九州ー琉球孤の火山の調査と試料採取、各種分析、および伊豆小笠原弧の以前に採取されて試料についての研究を行った。伊豆孤での三宅島産灰長石結晶からはかんらん石、Caに富む輝石の微結晶や自然銅等のプレート状結晶が認められた。また、同様に八丈島産の灰長石結晶についても再度分析を試みた。これらの結果は以前の結果(Nishida et a., 1994)の結果と大きくは変わらなかったが、自然銅以外の微小の包有物を確認できたが、EPMAによる同定には至らなかった。。また九州ー琉球孤の、特に鹿児島県竹島の灰長石の採取、および化学分析・結晶構造解析等を実施した。その結果Feに富む結晶(自然鉄?)などの微小結晶を確認できた。一部にはS(硫黄)も含む場合があることから、鉄の硫化物が存在する可能性も示された。これらに加え、灰長石巨晶の結晶学的特徴について考察を行った。その結果、1つの結晶内でも結晶構造に関するゾーニングが有る可能性が示された。 また、一部の灰長石についてはSr同位体比の分析も行い、母岩の値との比較も行った。その結果は、従来の結果同様、誤差の範囲で灰長石結晶と母岩(玄武岩)の値が一致することが確認された。また結晶のコアとリムでも同様の同位体比が測定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、九州ー琉球孤における火山産の灰長石巨晶の現地調査、試料採取を実施した。特に鹿児島県、竹島火山産の灰長石巨晶に着目し、試料採取後、顕微鏡観察、EPMA分析等を行った。灰長石は一般に均一な化学組成(An=89-95)を示し、かんらん石等の微結晶が確認できた。ほかの微小結晶や包有物としては、Feを含む微小空隙の多い結晶、Feを含むプレート状の包有物、またCu,Sを含む結晶が存在することが明らかになった。これらの一部は硫化物として存在している可能性があるが、それら以外は硫化物としての存在ではなく、自然鉄などの組成が示唆された。これらの微結晶は灰長石形成時に取り込まれて形成されたと予想される。この成果は日本鉱物科学会で報告した。同様の結果は、蔵王、恐山や佐渡の小木地域に産する灰長石結晶内に含まれる微小の硫化物(pyrrohotite + cubanite)(越後ほか、2013)とも類似の結果と言える。 また、阿蘇火山産の灰長石巨晶の観察、分析等も行ったが、明瞭な微結晶(包有物)は特定できなかった。これらについては試料を追加し観察を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
九州ー琉球孤の火山の竹島、阿蘇、桜島周辺の火山に含まれる灰長石結晶の精密な化学組成分析(組成マッピング等も含む)、結晶構造の解析、および微小包有物(あるいは結晶)の同定を進め、灰長石結晶(巨晶)形成時の物理・化学的な特徴について考察を 行ってゆきたい。中にはEPMA等で分析ができないような微小結晶もあり、今後分析方も含め検討してゆく。微小の自然銅のCuの同位体比測定法の開発も試みる。また、ほかの中部地方の火山産の灰長石(包有物が比較的多い)についても試みる予定。また、炭化水素の分析も方法を検討し試みる予定である。 また組成が均一に近く、1-4cmに及ぶ灰長石結晶の生成機構の解明、およびその親マグマの推定を全岩化学組成等からも推定を試みてゆく。マグマ混合モデル等も考慮し、考察を進める方針。
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次年度の研究費の使用計画 |
分担者の経費の使用(予定していた野外調査が天候不良で行くことができなくなった)残額が生じ、それにより差額が生じてしまった。 次年度にその差額を適切に使用予定
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