研究課題/領域番号 |
25400510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
周藤 賢治 新潟大学, 自然科学系, フェロー (50143748)
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研究分担者 |
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (80183771)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東北日本弧 / 奥尻島 / 青苗川層 / アダカイト質安山岩 / カルクアルカリ質安山岩 / 大陸地殻 / マグマ混合 / 結晶分化作用 |
研究概要 |
東北日本弧最北端に位置する奥尻島南部には,前期中新世の火山岩からなる青苗川層が分布する。また,男鹿半島には漸新世の玄武岩及び安山岩が分布する。これら2地域の地質調査と岩石採取を行った。これまでの申請者と共同研究者の研究により,青苗川層の火山岩は TiO2に富む玄武岩,MgOに富むアダカイト質安山岩と通常のカルクアルカリ質の安山岩・デイサイトから構成されることが明らかにされていた。 本研究においては主にカルクアルカリ質火山岩について,ジルコンU-Pb年代の測定,岩石記載,主成分元素と微量元素のXRF分析およびICP-MS分析,MAT262によるSr,Nd同位体比の測定などを行った。その結果,黒雲母含有角閃石ー輝石安山岩から22.3±1.5 MaのジルコンU-Pb年代が得られた。この年代はこれまで青苗川層火山岩に得られていたK-Ar年代やFT年代とほぼ一致する。カルクアルカリ質火山岩には,清澄で正累帯構造をもつ斜長石斑晶と逆累帯構造をもつ斜長石斑晶の共存,高Mg#のコアからなる単斜輝石斑晶と低Mg#のコアからなる単斜輝石斑晶の共存,高Mg#の単斜輝石リムに囲まれた低Mg#の斜方輝石斑晶の存在など,マグマ混合を示唆する記載岩石学的特徴が認められた。このような記載岩石学的特徴とカルクアルカリ質安山岩・デイサイトの化学組成の変化の特徴は,アダカイト質安山岩質マグマとSiO2が 64-65wt%のデイサイト質マグマの混合で説明される。 カルクアルカリ質安山岩の化学組成は大陸地殻の平均化学組成に類似していることから,カルクアルカリ質安山岩の生成過程の研究は,大陸地殻の形成を論じる上で重要と考えられている。今回の研究結果は,MgOに富むアダカイト質安山岩マグマの結晶分化作用ではカルクアルカリ安山岩は形成されそうにないことから,MgOに富むアダカイト質安山岩マグマの大陸地殻形成に果たす役割は小さいものであることを示唆しているといえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
奥尻島に産する青苗川層のカルクアルカリ安山岩の岩石記載や化学組成などの検討から,これらの安山岩がMgOに富むアダカイト質安山岩マグマとSiO2に富むデイサイトマグマの混合によって形成された可能性があることを示すことができたこ。しかし,男鹿半島の火山岩の岩石学的検討は,まだ十分にはなされていない。以上がおおむね順調に進展していると自己評価した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究を推進した過程で,当初とは異なる新たな事実が明らかになってきた。それは,玄武岩,アダカイト質安山岩及びカルクアルカリ質安山岩間で,Nb/Ta比,Zr/Hf比などに違いがあることが明らかとなったことである。平成26年度の研究においては,研究をさらに拡張して,東北日本弧の玄武岩,アダカイト質安山岩,カルクアルカリ質のSiO2に富む火山岩間でのHFSE含有量や元素比の違いなどを系統的に明らかにして,これらの火山岩の生成過程の解明を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも消耗品の購入が少なくて済んだため。 地質調査に必要なサンプル保存袋などの消耗品の購入のために使用する予定である。
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