研究課題/領域番号 |
25400515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
野坂 俊夫 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80252948)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 海洋底 / 下部地殻 / 斑れい岩 / 変質 / ヘスディープ |
研究概要 |
IODP Expedition 345 で採取したHess Deep Rift の斑れい岩類について,岩石薄片の作成,光学顕微鏡による鉱物の同定と岩石組織の観察,電子線マイクロアナライザーによる鉱物化学組成分析と元素濃度マッピング,ラマン分光分析装置による多形鉱物の同定,蛍光X線分析装置による全岩主要元素分析,誘導結合プラズマ質量分析計による全岩微量成分分析,および自由エネルギー計算ソフトウェアを用いた鉱物共生の解析を行った。 その結果,未分化なトロクトライト質岩石において,局所的な熱水変質作用によって初生かんらん石と初生斜長石が分解し,角閃石,斜長石,緑泥石,緑色スピネル,コランダム,ダイアスポアなどが生成していることが明らかになった。岩石組織と鉱物共生の解析は,次のような変質作用の時系列を示唆している:1)上部角閃岩相の温度条件での緑色スピネル,パーガサイト角閃石,二次的斜長石,緑泥石の生成;2)下部角閃岩相の温度条件でのコランダムと緑泥石,およびトレモライト角閃石の生成,3)緑色片岩相あるいはそれ以下の温度条件でのダイアスポア,蛇紋石,ブドウ石,滑石,粘土鉱物の生成。全岩組成から予想される鉱物共生は,緑色スピネル,コランダム,ダイアスポアなどのアルミナスな鉱物が,比較的斜長石に富む未分化トロクトライトが高温変質作用を受けた場合に生じることを示唆している。そのような岩石は海洋底最下部地殻を構成するものであり,海洋リソスフェアにはアルミナス鉱物が普遍的に産出するという仮説が得られた。 上記の仮説を検証するためには同種あるいは異種岩石の分析が必要であるため,IODPに対して,過去に海洋底から採取され保管されている斑れい岩類と超苦鉄質岩類のサンプル配分請求を行った。また国内外の陸上に露出している過去の海洋底由来のオフィオライトからの新規サンプル採集に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海洋底下部地殻からの緑色スピネル,コランダム,ダイアスポアなどのアルミナス鉱物の発見は世界初であり,当初の予想以上の成果といえる。それらの鉱物が広く海洋底に存在するという仮説が実証されれば,そのインパクトは大きい。さらにこの新発見は,既存の海洋底掘削試料とオフィオライト下部地殻物質の高温変質作用に対する新たな興味を引き出すものであり,今後の研究の新たな展望を開くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ,海洋底の斑れい岩類と超苦鉄質岩類,および国内外の陸上に露出しているオフィオライトからのサンプルについて,今年度と同様の多面的な分析を行い,仮説の検証を行う。また当初の予定通り,低温変質作用である蛇紋岩化作用や粘土鉱物の形成過程の解析にも取り組み,一般的な海洋底変質作用の描像を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた論文投稿について,データの補充が必要と判断し,次年度に延期したため。 前年度分の論文を含めて,複数の論文を投稿する予定である。オフィオライトの比較試料のサンプリングが必要になったため,旅費の増大が見込まれるが,学会旅費と消耗品費の節約で調整する予定である。
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