研究課題/領域番号 |
25400516
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
川嵜 智佑 愛媛大学, 理学部, 研究員 (50136363)
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研究分担者 |
大和田 正明 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50213905)
永嶌 真理子 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80580274)
齊藤 哲 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (00528052)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超高温変成作用 / 東南極ナピア岩体リーセルラルセン山 / 変成温度圧力履歴 / アーマルコライト / チタン-鉄酸化物 / 高温高圧再現実験 / 酸素分圧 |
研究概要 |
超高温変成岩類の変成温度圧力履歴を精密に解析する方法を確立するために,酸素分圧によるアーマルコライトの安定領域の変化を決定することを目的として,平成25年度は,高温高圧条件で,所定の酸素分圧を保持するために種々の鉄酸化物の試料容器を高温条件で作成した.試料容器を焼結した時と同一の酸素分圧でアーマルコライト組成の出発物質(ルチル+イルメナイト)を合成した.以下に研究実施経過を述べる. 1. 出発物質を詰めたマグネタイトの試料容器を窒化ホウ素圧力媒体中に挿入した.ピストンシリンダーを用いて,144時間10キロバール1000Cで焼結した.窒化ホウ素圧力媒体と試料容器が直接していたために,試料は試料容器とともに還元熔融した.わずかに残存した未熔融部分は,ルチル+イルメナイトの集合体であった. 2. 窒化ホウ素圧力媒体と試料容器が直接しないように,出発物質を詰めたヘマタイト試料容器を白金チューブに封入した.白金チューブの両端を溶接して,試料外の酸化還元状態が試料部に及ばないように工夫した.白金チューブは窒化ホウ素圧力媒体中に挿入した.10キロバール1000Cで221時間15分保持した.試料容器の高温部分ではマグネタイトに富み,低温部分ではヘマタイトに富んでいた.ルチル+イルメナイト+ウルボスピネルが生成した. 3. 白金チューブに,鉄酸化物(ヘマタイト+マグネタイト),粉末酸化白金,試料の順に封入し,白金チューブの両端は溶接した.鉄酸化物は試料を高酸素状態に保持し,粉末酸化白金は鉄酸化物と試料との反応を遮断する.白金チューブは窒化ホウ素圧力媒体中に挿入した.これを東南極ナピア岩体リーセルラルセン山の最高変成条件と考えられている8キロバール1060Cで98時間保持した. 現在,この実験生成物の化学分析および生成物の相の同定の準備を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移管後の装置の立ち上げで少し手間取ったので,当初計画よりやや遅れている.しかしながら,研究課題を遂行するために必要なピストンシリンダー装置や還元炉などの主要設備の立ち上げは終了した.高温高圧実験で使用する種々の部品の調達や工作器具などの環境整備はおおむね終了した.【研究実績の概要】で述べたように,長時間の高温高圧再現実験を3 度実施することができた.試料周りの高圧部分を改良することで,高温高圧条件下で酸素分圧を制御保持するための基本的な技術を構築する目処が付いた.還元炉を用いて,酸素分圧による白金中へ固溶する鉄の量の変化を調べる実験を開始した.この実験結果を高温高圧条件で白金中への鉄の固溶量に適用することで,高温高圧条件での酸素分圧を求めることが出来る.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,以下のように研究を進める. (1)還元炉を用いて,酸素分圧による白金中への鉄量の固溶量の変化を調べる. (2)熱力学に基づいた金属鉄-鉄酸化物-酸素分圧の経験的関係式を導き出す. (3)高温高圧再現実験で使用する白金チューブや鉄酸化物と試料を遮断する白金膜中への鉄の固溶量を測定する.これと,(1)および(2)の結果とから,高温高圧下での酸素分圧を決定する方法を提案する. (4)アーマルコライトが安定化する温度,圧力および酸素分圧を試料容器に封入する鉄酸化物の種類と遮蔽壁に使用する酸化白金の量から求める. (5)東南極に産する超高温変成岩類についてFe-Mg-Ti鉱物の産状を調べ,鉱物化学分析を行い,変成温度圧力履歴を調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,人件費・謝金枠をとっていたが,平成25年度は該当しなかった. 次年度では,消耗品費に使用する.
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