研究課題
レーザーアブレーション装置(LA)とマルチコレクタICP質量分析計(MC-ICP-MS)を組み合わせて,固体試料の微小領域のホウ素同位体比(11B/10B)を直接 in-situ(その場)で分析する技術の開発を行った.元素の同位体比の分析には,通常では複雑で時間のかかるサンプルの前処理作業(溶液化,元素分離と濃縮など)が必要であり,高精度なデータの取得には技術面で困難な点がある.そこで,本研究では簡便で高空間分解能を有する分析手法を開発することを目的とした.本研究では,標準物質(人工ガラス)および標準岩石のガラスや粉末加圧ペレットを用いて,ホウ素を試料から分離せずに,LA-MC-ICP-MS法により直接同位体比を分析する技術開発を行った.具体的には標準物質を用いて分析条件の最適化と精度や確度の評価を行った.NIST-610スタンダードと岩石試料を交互に分析し,LAでのサンプリング,ICPでのイオン化,MSでのイオン強度の測定に至るまでの同位体分別を補正した.ホウ素濃度が10ppm以上の試料では,一部の試料を除いて本研究の測定値と推奨値(参考値)とは誤差の範囲内で一致しており,分析の正確性が実証された.しかし炭酸塩試料(JCp-1, JCt-1)は,系統的に-2‰程度低めに出ており今後の検討・改良が必要である.ホウ素濃度が10ppmよりも低い試料について,従来の方法よりも簡便な湿式分析でのホウ素の分離・濃縮法を開発することが課題である.また,ホウ素濃度が10ppm以上の天然の岩石(インドネシアの沈み込み帯)に本研究で開発したLA-MC-ICP-MS法を適用してデータを取得する予定である.
2: おおむね順調に進展している
本研究では前半で技術開発,後半で天然試料への応用を計画しており,前半が終了したところである.これまで技術開発はほぼ成功しており,次年度からの応用へ移行できる状況である.
前年度までに技術開発した手法を天然の岩石へ応用する.具体的にはインドネシアの沈み込み帯の岩石,および九州~琉球弧の火山岩をターゲットとする予定である.
数千円と軽微なものであり,概ね当初計画どおりに遂行できた.
数千円と軽微なものであり,次年度の計画に大きな変更はない.Arガスなどの消耗品として使用する予定である.
すべて 2015 2014
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