研究課題
本研究では、島弧の火山岩に含まれるカンラン石や輝石などの斑晶やメルト・インクルージョンのホウ素同位体比をレーザーアブレーション(LA)装置と多重検出器型ICP質量分析計(MC-ICP-MS)を用いてin situ分析する手法を開発し、これを沈み込み帯の岩石に応用することを目的とする。しかし本研究で主力となるLA装置が平成27年9月に故障し、平成28年12月に修理が完了するまで使用不可能の状況となったことから、予定どおりの実験を行うことができなかった。修理完了後、LA-MC-ICP-MS法を用いたホウ素同位体分析法をひとまず実用化させることを目的として、高精度のデータ取得が比較的容易に期待できるトルマリン(電気石)をターゲットとして、ホウ素同位体比の分析手法の開発を行った。トルマリンにはホウ素がパーセント単位で含まれており、ppmレベルでしかホウ素を含まないカンラン石や輝石よりも高いイオン強度を得ることができ、精度の高いデータが得られると期待された。LA-MC-ICP-MS分析でしばしば問題となるマトリックス効果の影響を補正するため、マトリックスマッチングの方法を取り入れた。ホウ素同位体比が決定されているトルマリン標準試料をスタンダードとして、未知試料のトルマリンを測定する。その際、データの繰り返し再現性や正確度を評価するために別のトルマリンが必要である。適切なトルマリンが市販されていないため、研究室内標準試料として使用するためのトルマリンを準備し、複数の分析法を使って値付けと均質性の評価を行った。湿式分析とLA分析によるホウ素同位体比は一致しており、0.2パーミルの範囲で均質であることも確かめられ、モニター試料として使用できることを確認した。この分析法を天然のトルマリンへ応用するため、山口県彦島地域と室津地域の電気石のホウ素同位体比を測定した。
3: やや遅れている
本研究の主力であるレーザー装置が故障し、使用不可能な時期が1年以上続いたため、予定どおりの実験が行えなかった。
トルマリンのin situ分析を応用して、他の鉱物の分析にも適用する。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
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