研究実績の概要 |
大阪府立大学地域連携機構に2015年度に納入されたEPMA(JEOL JXA-8530F)を用いて、マリアナ前弧に位置する雷神海山、バベル海山、ツインピークス海山、南チャモロ海山を初めとする蛇紋岩海山の蛇紋岩類の分析を、特に初生かんらん石とそれを置換する蛇紋石に注目して行った。従来、蛇紋岩化作用により、かんらん石から蛇紋石が晶出する際に前者より後者の方がのFe/Mg比が低くなるため、過剰になったFeが磁鉄鉱をつくると考えられてきた。しかしながら、分析結果はこの考えと全く矛盾するもので、磁鉄鉱を伴うことが多いにも拘わらず蛇紋石の方がFeに富む傾向が明瞭に認められた。Feの起源を求めるため、他の初生鉱物(角閃石、単斜輝石、斜方輝石)を置換する蛇紋石においても、それらよりもFe/Mg比が高いという同様の傾向が顕著に認められた。蛇紋岩化作用は、地震学的や生物学の分野でも注目されているが、蛇紋岩化作用そのものの厳密な理解が不足している。蛇紋岩化作用における流体の起源、役割、性質について、Feの挙動に注目し、再検討を行う必要がある。 さらに、南チャモロ海山から回収された青色片岩(砂粒~シルト大)について調べた。これら変成岩は、珪質~泥質岩と蛇紋岩との境界部で形成されたと考えられるが、主要構成鉱物である角閃石にはNi, Crが含まれておらず、ジルコンやチタナイトが認められた。そのことから蛇紋岩側ではなく珪質~泥質岩側の反応帯の一部をなしていたと考えられる。
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