研究課題/領域番号 |
25400521
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
柚原 雅樹 福岡大学, 理学部, 助教 (30330898)
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研究分担者 |
亀井 淳志 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60379691)
外田 智千 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60370095)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東南極 / セール・ロンダーネ山地 / 花崗岩 / 火成活動 / マグマの成因 / 同位体比 / 希土類元素 |
研究実績の概要 |
セール・ロンダーネ山地西部の南側に広く分布する変トーナル岩とその北側に広く分布する変成岩中に貫入している花崗岩岩脈のSr・Nd同位体比測定と希土類元素(REE)分析を行った。これらの花崗岩岩脈は、変形―変成作用との関係から、変成作用中に貫入したグループ(Syn-kinematic花崗岩岩脈)とそれ以降に貫入したグループ(Post-kinematic花崗岩岩脈)に区分される。変トーナル岩中に貫入するSyn-kinematic花崗岩岩脈は、変トーナル岩と同様に低いK含有量を示し,変トーナル岩と同様に未成熟島弧での火成活動の産物であることが示唆される。これに対し、北側の変成岩中に貫入するSyn-kinematic花崗岩岩脈とPost-kinematic花崗岩岩脈は、ストック状花崗岩と同様に高いK含有量を示す。これらの花崗岩岩脈は、ストック状花崗岩のうち、厚化した地殻下部の部分溶融によって形成されたマグマを起源とするベンゲン花崗岩と類似した全岩化学組成を有するが、SrやTh含有量がベンゲン花崗岩よりも低い。さらにこれらの花崗岩岩脈の多くは、軽希土類元素に富み、重希土類元素に乏しいコンドライト規格化パターンを示す。したがって,花崗岩岩脈のマグマ起源は,現在露出しているストック状花崗岩とは異なる可能性が高い。 また、ストック状花崗岩うち、ビキングヘグダ花崗岩は変トーナル岩と類似したSr・Nd同位体組成を示すが、ピングビナネ花崗岩とベンゲン花崗岩はそれらとは異なる同位体組成を示すことが明らかとなった。このことは、ピングビナネ花崗岩とベンゲン花崗岩の起源物質が変トーナル岩ではない可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度に手がける予定だった花崗岩岩脈の希土類元素の定量とそのデータ解析はおおむね実施することができた。加えて、これらの貫入母岩である変成岩の希土類元素の定量も実施することができた。しかしながら、これらのSr・Nd同位体比測定については、Sr同位体比の測定はおおむね実施することができたが、Nd同位体比は予定していた測定の多くを実施することができなかった。また,花崗岩の構成鉱物のEPMA分析も十分に行うことができなかった。したがって、全体としてはやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
花崗岩岩脈ならびに変成岩のNd同位体比測定を進め,これまでに得ているデータと併せて、マルチアイソトープならびにREE組成による起源物質ならびにマグマ分化過程の解析を行う。偏在するストック状花崗岩体よりも広範囲に点在する花崗岩岩脈を使い、ストック状花崗岩体との詳細な空間的、化学的比較も行う。これにより、大陸衝突前後のマグマプロセスの変化過程をストック状花崗岩体と花崗岩岩脈を使って広範囲に解析する。さらに、それらの花崗岩体と花崗岩岩脈の貫入時期をより正確に把握するため、ジルコンのSHIRIMP年代測定作業を順次進める。また、花崗岩の構成鉱物のEPMA分析も行い、花崗岩体間の構成鉱物の化学組成の比較も行う。特に、ベンゲン花崗岩はマイロナイト化を被っているため、マイロナイト化の条件の推定も試み、セール・ロンダーネ山地における変形-変成作用との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
外田の12月~2月の南極における外国人研究者との合同野外調査とそれに関係する事前打ち合わせ、第58次南極地域観測隊隊員としての3月の冬期訓練等のため、EPMA分析の時間を確保できなかった。さらに、島根大学に設置の質量分析計が年度後半に故障し、修理が完了した3月までSr・Nd同位体比測定ができなかった。このため、一部の経費を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
EPMA分析については、今年度早期に行う予定である。さらに、Nd同位体比測定も継続して行う予定である。これらに関係する作業等に、繰り越した経費を使用する。
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