研究課題/領域番号 |
25400525
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
松本 潔 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60373049)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | エアロゾル / 粗大粒子 / 硝酸塩 / 窒素沈着 / 乾性沈着 |
研究実績の概要 |
昨年度製作した、粒径10μm以上のエアロゾルを10~20μm、20~30μm、30~50μm、50μm以上の4段階に、10μm以下のエアロゾルも8段階に分粒可能なエアーサンプラーの性能試験を行なった。半密閉チャンバー内に飽和食塩水を霧状に噴霧し、その霧粒子の個数濃度の粒径分布を光学的に測定すると同時に、自作サンプラーで捕集した。発生させた飽和食塩水の霧粒子の個数濃度粒径分布からは、10~50μmの霧粒子が多く発生していることが確認された。この個数濃度粒径分布から求めた霧粒子の体積濃度粒径分布と、自作サンプラーで捕集された試料の分析から得られた霧粒子の質量濃度粒径分布から求めた体積濃度粒径分布は、後者の体積濃度がやや過小計測の傾向にあることを示し、その程度は粒径が大きいほど大きいことが確認された。これはサンプラー内部の、主に壁面における粒子のロスを示唆している。このことは予想されたことであり、そのロスの割合を数値化して計測値を補正できるようにすれば、本サンプラーは実観測で有効となるが、現時点ではこのロスの割合にばらつきが大きく、有意な補正方法が得られていない。昨年度の課題として残ったチャンバー内での霧粒子の空間的分布の不均質さの解消が今なお不十分であるためと考えられる。実大気において粒径10μm以上のエアロゾルを採取した試料の分析も試みたところ、硝酸塩が粒径2~10μmの粗大粒子領域のおよそ20%程度の濃度で検出されることも確認された。その測定値には大きな不確かさが残ったままだが、硝酸の大気からの除去、地表への沈着経路として粒径10μm以上のエアロゾルが重要であることは本研究からも確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、1) 粒径10μm以上のエアロゾルを分級採取可能なサンプラーの製作、2) その性能試験、3) 実大気エアロゾルの採取・分析、4) 10μm以上のエアロゾルの動態や窒素沈着への寄与の解明、の大きく4つの内容に分かれている。1)は初年度に完了している。本年度は2)を完了し、3)のデータを蓄積する予定であった。しかし、2)についてはサンプラー内での粒子のロスの程度を数値化するに至っておらず、3)についても様々な気象条件下におけるデータの蓄積という当初の目的に適うだけの観測を行えていない。従って研究の進捗状況は不十分といえ、上記の区分と判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
サンプラー内での粒子のロスを精度よく数値化することに注力する。飽和食塩水による霧粒子を用いた方法では限界がある可能性もあり、フライアッシュなど他の模擬粒子の利用も検討する。実大気でのサンプリングも、研究代表者の所属機関のある甲府でも行うなど、機会を見つけてできるだけ多く行い、粒径10μm以上のエアロゾルの動態解明に資するデータの蓄積を目指す。得られたデータを用いて4)の考察を行なう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
性能試験に用いる霧粒子の試験チャンバー内での空間分布の把握、及びサンプラー内での粒子のロスの検討に時間を取られ、実大気でのサンプリングをあまり行なわなかった。このためサンプリングに必要な消耗品等を次年度購入できるようにする必要がある。
|
次年度使用額の使用計画 |
実大気でのサンプリングを多く行なうため、必要な消耗品等の購入に当てる。
|