研究課題/領域番号 |
25400526
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
胸組 虎胤 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00200246)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 環状ジペプチド / ジアステレオマー / エピ化 / γ線照射 / 疎水性 |
研究概要 |
平成25年度,サブテーマA(環状ジペプチドのジアステレオマーの分別)に関し,Cyclo-(L-Ala-L-Ala)とCyclo-(D-Ala-L-Ala)の分離を逆相HPLCで達成できた。純水,または水とアセトニトリルの混合液を溶離液として用いた場合,後者が速く溶出された。しかし,水ーメタノールを溶離液とした場合には溶出順序が逆となる報告もあり,その理由の解明と疎水性との関連については今後の考察が必要である。しかし,上記の溶出条件を用いて,γ線照射後の環状ジペプチドのエピ化反応を観察することが可能となった。 サブテーマB(環状ジペプチドへのγ線照射)に関し,純粋なCyclo-(D-Ala-L-Ala)を鎖状ジペプチドBoc-L-Ala-D-Ala-OMeのBoc基の脱保護と環化反応により達成することができた。脱保護にはギ酸を用い,環化にはt-ブチルアミンを用いる条件を確立できた。反応液を純水に溶解して凍結乾燥を繰り返すという温和な条件を用いて収率55%で目的生成物を得た。 次に,この合成品および市販のCyclo-(L-Ala-L-Al)とCyclo-(D-Ala-D-Ala)の酸性(pH2)および塩基性(pH10)水溶液にγ線を照射し,原料物質の分解とエピ化を観測した。その結果,Cyclo-(L-Ala-L-Al)とCyclo-(D-Ala-D-Ala)はエピ化してCyclo-(D-Ala-L-Ala)を生成するが,Cyclo-(D-Ala-L-Ala)はエピ化せずに開環することが明らかになった。一方,Cycl-(L-Ala-L-Al)とCyclo-(D-Ala-D-Ala)の開環速度はCyclo-(D-Ala-L-Ala)の開環速度よりも遅かった。本反応では,条件では環状のホモキラルジペプチドの方が環状ヘテロキラルジペプチドより残存しやすいことを意味する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマA(環状ジペプチドのジアステレオマーの分別)についてはアラニン(Ala)の環状ジペプチドのジアステレオマーの分離条件を確定できたが,他のアミノ酸を用いた環状ジペプチドについては達成できていない。これは試薬会社に依頼した合成に多くに時間がかかったことによる。 サブテーマB(環状ジペプチドへのγ線照射)については環状ジペプチドCyclo-(D-Ala-L-Ala)の合成条件を確立し,その水溶液へのγ線照射と反応液分析をほぼ完了することができた。これは次年度達成予定であった項目も含んでいる。 サブテーマC(オリゴペプチドの立体特異的縮合反応)については,環状ジペプチドからの縮合の可能性を考察する必要があることが,ジペプチドのアルカリ溶液中での安定性を調べる過程で明らかとなったため,次年度はこちら方向性を追及することが重要と考えられた。 以上から,サブテーマAの進展の遅れはあったが,サブテーマBでの予想以上の進展,サブテーマCでの予期せぬ発見を差し引くと,おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
サブテーマA(環状ジペプチドのジアステレオマーの分別)についてはアラニン(Ala)の環状ジペプチドのジアステレオマーの分離条件を確定できたが,他のアミノ酸を用いた環状ジペプチドについては達成できていなかった。すでに,他のペプチドの合製品を入手できたので,この合製品の分離を検討していく。 サブテーマB(環状ジペプチドへのγ線照射)については,中性領域の溶液に溶解した環状ジペプチドへのγ線照射を検討していく。 サブテーマC(オリゴペプチドの立体特異的縮合反応)についてはCyclo-(L-Ala-L-Al)とCyclo-(D-Ala-D-Ala)が弱塩基性の条件で縮合する可能性を検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
必要としたペプチドの合成に数カ月を要することが明らかとなったため,年度内の納品と支払いが困難考え,平成26年度に改めてペプチドを発注したためである。 ペプチドは平成26年度初頭にすでに発注した。
|