研究実績の概要 |
生命機能に不可欠なタンパク質の片手構造(ホモキラリティー)の化学進化的発展段階は、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチドの段階に分けられる。本研究はオリゴペプチド段階の3つの発展的側面(A.エピ化、B.分別、C.立体特異的縮合)に注目して実験的証拠を収集し、ホモキラリティー増殖の化学進化モデルの構築を目指した。A.分別:高濃度水溶液でヘテロキラルペプチド(L-D, D-L等)が沈殿、ホモキラルペプチド(L-L、D-D等)が溶解する。多くの鎖状オリゴペプチドの計算化学とHPLC分析と疎水性尺度log P(オクタノール‐水系の分配係数Pの対数値)から、ホモキラルペプチドはヘテロキラルより疎水性が低く(Ala3でその差は0.40(LLLとLDLの比較)、LLLがLDLに比べて約2.5倍の水溶性をもつ。B.エピ化(L-LがL-D,D-Lに変化) :ホモキラルペプチドとヘテロキラルペプチドの相互変換がγ線照射で起こるのは確認されている。ヘテロキラルペプチドは沈殿し、地殻のγ線によりエピ化し、ホモキラルとなって水溶性となる。これはAの過程とともに間隙流体と粘土鉱物の間での分別とエピ化を示唆する。Cyclo-(D-Ala-D-Ala)およびCyclo-(L-Ala-L-Ala)の固体に、Co60によりγ-線を照射すると、0.4%がCyclo-(D-Ala-L-Ala)にエピ化した。Cyclo-(D-Ala-L-Ala)に照射すると0.8%がCyclo-(D-Ala-D-Ala)とCyclo-(L-Ala-L-Ala)にエピ化した。ヘテロキラルな環状ペプチドの方がエピ化速度は高かった。C. 立体特異的縮合:オリゴペプチドほどキラリティー識別能が高く、LとDのホモキラルオリゴペプチドの僅かな偏りがあれば、ポリペプチド中のキラリティーが濃縮されると考えられる。
|