前年度に引き続き、研究代表者と研究分担者が共同で西南日本弧海溝寄り地域の中新世火成岩類の野外調査と試料採取を行った。前年度までに採取した試料と合わせて、選別した試料について東京大学地震研究所設置のレーザーアブレーションICP質量分析計を用いて、ジルコンのウラン・鉛年代測定を行った。 ジルコンのウラン・鉛年代測定の結果、最終年度に得られた知見は次の通りである。四国西南部の外帯花こう岩の年代は14.1~15.0 Maの範囲であり、前年度までに行った他地域の瀬戸内火山岩類や外帯花こう岩類のウラン・鉛年代の範囲とよく重なる。また前年度までに行った松山周辺の瀬戸内火山岩類及び、石鎚層群の火山岩類、貫入岩類のウラン・鉛年代とも重複するが、それらよりやや古い年代が見られ、測定試料数を増やして活動時期が先行するかさらなる検討を要する。 研究期間を通じたジルコンのウラン・鉛年代測定年代測定からは、瀬戸内火山岩類については、明確な島弧伸長方向の年代変化は見られない可能性が高い。また、紀伊半島、四国西部については外帯花こう岩類を含めて、予察的には明確な島弧横断方向の年代変化を見出だしていない。 また、最終年度において瀬戸内火山岩類と時空的に共存するものの、放射年代によるマグマ活動年代の十分でない西南日本弧外縁の玄武岩質岩体について、試料採取を行うとともに、Ar-Ar年代測定の試料調整を終え、2016年度中の分析の準備を整えた。 これらの広域的なマグマ活動の年代データから、スラブメルトを生成しうるような高温の四国海盆スラブの中期中新世の西南日本弧下における時空分布を今後議論する。
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