研究課題/領域番号 |
25400528
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菅原 広剛 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (90241356)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁化プラズマ / 誘導結合型プラズマ / フィルタ効果 / シミュレーション / 電子空間分布 / 電子エネルギー利得 / 磁界制御 / 電子サイクロトロン共鳴 |
研究実績の概要 |
対向発散磁界を印加した誘導結合型プラズマが磁界分界面で上下の強弱2領域に分かれる仕組みを解析し、低損傷材料プロセスへの応用可能性を検討することが目的である。初年次購入備品の並列計算機にCPUとメモリを増設し、主に次の3点を実施した。 1.解析モデル拡張。電離で生じた正イオンとプラズマ容器内壁付着電子が作る空間電荷電界の効果を取り入れ反応活性種生成への影響を検討した。電子がエネルギーを得易い領域に向かう力が働き正イオン生成を促進する傾向が示唆された。計画後段の反応活性種輸送過程解析に用いるイオン生成位置分布を算出した。 2.プラズマ領域分離効果・分界面電子通過特性解析。分界面を通過し下方拡散する電子の面密度とエネルギー特性は外縁部強磁界下と中心付近弱磁界下とで異なった。上下両領域の磁力線が近づく外縁部では電子は衝突散乱時の磁力線乗換で分界面を越え拡散すると考えられる。旋回径が大きい高エネルギー電子ほど乗換時の変位が大きく先行拡散する傾向が見られた。中心付近では磁界の束縛が弱く低エネルギー電子も容易に下方拡散した。中心付近は電子通過面密度が高く通過電子の平均エネルギーは低かった。磁界構造に依拠した電子拡散過程の説明が与えられ、電子に対するフィルタ効果としてエネルギー選択性が指摘された。 3.実験結果再現。水素の電子衝突断面積をプログラムに組み込み、実験報告例のある水素プラズマを解析した。実験の観測法に合わせ諸量分布にアーベル変換(円筒対称分布の投影)を施した。プラズマ発光強度分布との相関が考えられる電子エネルギー密度(電 子数密度×平均電子エネルギー)分布には、プラズマの外見的特徴と共通する分界面での急減、容器上面アンテナ直下の最大値、分界面中心付近を通る下部領域への拡散が再現された。 これら成果と新知見は論文と国内外学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年次に構築したプログラムに空間電荷電界と器壁での電子反射・付着の効果を取り入れ、考慮条件を拡張して反応活性種生成に与える影響を解析した。また、反応活性種輸送過程解析(基本動作確認済みのプログラムを改造中)に用いるイオン生成位置分布を算出した。 電子が誘導電界からエネルギー供給を受ける過程に影響を与える諸条件が検討された。また、実験的に観察される特徴が再現された。本研究の中核であるプラズマ領域分離効果をもたらす対向発散磁界のエネルギー選択性(フィルタ効果)や拡散路形成の仕組みについて理解が進んだ。 得られた知見は論文および国内外の学会等で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
第2年次までの解析により、電子へのエネルギー供給やプラズマの維持に影響を与える諸条件の定性的傾向、共鳴磁界域付近での顕著な電子エネルギー利得、対向発散磁界分界面を通過する電子の特徴的拡散過程などについて知見が得られた。 最終年次は、諸条件の範囲を広げて計算機解析を行い、フィルタ効果の定量評価を試みる。プログラム改造を進めている反応活性種生成・輸送過程の解析を行うとともに、低損傷材料プロセスへの応用可能性検討のための知見を抽出・整理し、好ましい制御のための指針を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に成果発表関連支出(海外論文誌掲載料、論文別刷代、学会参加費等)について、件数、単価、為替などの状況により差額が生じたもの。 また、3月購入の消耗品代が翌年度決済へ繰り越された分が含まれる。
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次年度使用額の使用計画 |
論文掲載料・別刷代、学会参加費など、最終年度の成果発表関連支出に合算して使用する。
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